ライフタイムバリュー(Life Time Value: LTV)
オンラインショッピングを経営する皆様には既に重要な指標として知られているかと思いますが、リピート率を語る時同時に重要になるのが貴社顧客のライフタイムバリュー(Life Time Value: 以下LTV)です。この指標は実は貴社の売上規模以上に重要な指標と言うことができます。何故なら高いLTVを維持しているということは高いリピート率を維持しているということであり、高いリピート率を維持している限り、ユーザーが将来会社にもたらしてくれる利益水準までは新規顧客に投資をしても、その投資は将来会社に返ってくるといえるからです。
先ずは分かりやすい事例から説明します。
もし仮にある会社の1顧客の将来にわたり会社に貢献する利益の平均が3000円だとします。であれば新規顧客の獲得に2900円支払ったとしても100円の利益が出ることになります。従いこの会社は新規顧客獲得キャンペーンに2900円まで支払っていいことになります。この数字が分かっているのと分かっていないのとでは経営判断上大きな違いが出てきます。貴社が既に1年以上営業しているのであれば、今すぐLTVの計算をされることをお勧めします。
LTVのコンセプト
LTVの詳細な計算方法の説明にに入る前にLTVのコンセプトを理解する必要があります。大まかにいうと、各特定期間のユーザーの固まりを1世代と考え、その世代のユーザーが次の世代にどれくらい貢献しているのかを統計的に見るコンセプトのこと意味します。例えば2010年の総新規ユーザー数が50000人いたとするならば、その50000人が、2011年、2012年、2013年の売上にどれほど貢献するかを可視化します。この各年代の世代を毎年計算し、翌年以降にどれほど貢献しているかを各世代毎に計算していきます。1年を1世代とすると最低でも5年程度の営業年数がないと計測できないため、営業年数が少ない場合は4半期毎を1世代として計測を開始することを推奨します。このように全世代を計算した後、ある特定の年もしくは四半期の売上のうちどれだけの割合の売上が、過去の世代が作っているのかを見る手法をLTV分析と呼びます。
LTVの計算方法
既に混乱されている方も多いと思いますし、何か専用のツールが必要なのではと思われている方も多いと思います。しかし、基本さえ押さえれば、マイクロソフトのエクセルとアクセスで分析可能ですので、ツールに高いお金を払う前に、先ずはLTV計算の手法をしっかり理解しましょう。
先ず計測する期間を決定します。3年ほどの営業実績がある場合は年度で、3年未満の場合は4半期でのパフォーマンスを計測するといいでしょう。次に該当期間内のユニークな初回購入者数を抽出します。システム上初回購入者が抽出できる場合は比較的簡単です。抽出できない場合は歴代の初回購入者を該当期間に絞込みアクセス等で抽出する必要があります。次に該当ユーザーが、次の期間(年もしくは四半期)にいくら購入したかを抽出します。そしてまた次の期間と抽出を続け、最も新しい期間になるまで作業を続けます。
例えば計測を2011年の第一四半期から開始する場合は、第一四半期のユニークな新規購入者が次の第二四半期、第三四半期と継続して購入金額を抽出し、最後本年度、2013年の第二四半期まで10四半期まで購入金額を抽出します。これが2011年第一四半期、別名第一世代の貢献売上金額となります。
2011/Q1 | 2011/Q2 | 2011/Q3 | 2011/Q4 | 2012/Q1 | 2012/Q2 | 2012/Q3 | 2012/Q4 | 2013/Q1 | 2013/Q2 |
1,000,000 | 200,000 | 150,000 | 100,000 | 100,000 | 100,000 | 100,000 | 100,000 | 100,000 | 100,000 |
上記のような数字の抽出がされると思います。次に2011年の第2四半期のユニーク新規購入者数を抽出し同様の抽出を実施します。結果下記のような抽出が完了するとおもいます。これを第二世代と呼びます。
2011/Q2 | 2011/Q3 | 2011/Q4 | 2012/Q1 | 2012/Q2 | 2012/Q3 | 2012/Q4 | 2013/Q1 | 2013/Q2 |
1,200,000 | 250,000 | 170,000 | 100,000 | 100,000 | 100,000 | 100,000 | 100,000 | 100,000 |
上記のような数字の抽出がされると思います。
ここで2011年のQ2を見てみると、2011年Q2の第二世代の新規ユーザーの売上で120万円、その同じ期間に第一世代の売上が20万円です。従い、この2011年Q2現在の売上に占めるリピートユーザー率は
20÷120で、16%となります。
このように以後世代が新しくなればなるほど、過去の世代の売上比率が全体比率の中で大きな割合を占めてくることになります。これを最新の四半期まで計算し、年間の平均リピート率を計算します。
一旦リピート率が出れば、それを10年繰り返し、金利損などを含めたディスカウントレートを設定し、1ユーザーが将来10年に渡り生み出す利益を計算します。40年等、長期で計算する場合もありますが、そのような長期の変動は予測が非常に難しいため、ひとまずは10年で問題ないと思います。
その10年の利益と1新規ユーザー獲得のCPAコスト(コスト・パー・アクイジション)を比較し、現在の投資が将来利益をもたらすかを計算します。
リピート顧客で6割以上の売上を稼ぐことが出来れば貴社のビジネスは安定して永続的なものとなるでしょう。
ここで表される数字はあくまでも貴社の活動の結果です。この数字に何をすべきかは示されておりません。リピート顧客を増やすためには常に販売商品以上の価値を提供するという経営努力経営努力が必要とされます。