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2012年11月27日火曜日

KPIの成長率

「香川くん、KPIの中で一番大事なのは何かなあ?」
「はい?やはり結果を見るには売上で、プロセスを見るには訪問数とかでしょうか?」
「そうとも言うね。でもやっぱり一番大切なのは昨日より成長したかだと思う。なので、主要なKPIを抜き出して先週との比較、先月との比較、昨年との比較を実施することが大事なんだ。」
「ほう、」と、生返事な香川に対して草薙は続ける。
「各事業の成長度合いによって、週か月か年を決めるとするだろ。それぞれをWeek on week, Month on month, Year on yearと言うんだ。仮に年次での成長率を指標にするなら、大事な事は必ず昨年の実績を上回ること。事業にとって成長がガソリンで、ガソリンが無いと走ることもできない、つまり事業を持続することができなくなるんだ。」

さて、皆さんの会社でも、草薙のように事業の成長に合わせて成長の指標を決めましょう。成熟したビジネスでならYear on year、成長途上のビジネスならMonth on monthを選択することがベターでしょう。その上で、各主要KPIの年次もしくは月次成長率の一覧表を作成し、その成長率だけのグラフを一部用意すると、会社としての勢いと問題の在り処を明確に知ることができます。

2012年7月25日水曜日

開発部でのKPI選択

毎日徹底という意味では編成部と1,2を争う個性派軍団の開発部。きっとさしたる進捗もないだろうという憂鬱な気持ちを持ちながら草薙は開発部を訪ねた。
「田中部長、おはようございます。その後KPIの導入の方はどうですか?」
「ああ、草薙さん、おはようございます。丁度相談しようと思っていたところです。」
「はあ、といいますと?」
「いや、結局開発部でのKPIというのは難しく時間を記録はしているものの、どうしていいものやら」
「そうですか。以前もお伝えしましたが、先ずは時間を記録すること、その上でその時間が生産活動に利用されているかという指標を設けてみてはどうでしょうか?」
「例えば、会議や資料作成などの間接業務と、コーディングや仕様書作成などの直接業務とに分けてみるとか。そうすることで日々生産性が上がっているかを確認することができます。」
「なるほど、確かにそれは良い案ですね。」
田中はできるかなという顔をしながら頷いた。

この開発部のように、直接的にビジネスのアウトプット指標を左右しない部署のKPI管理は非常に難しいものがあります。今回のケースのように生産性を測るのもひとつの手ですが、人数が少ない場合はむしろ管理しないという選択肢も検討してみましょう。是が非でも計測することが目的ではなく、あくまでも結果数値の向上が目標ですので、必要なものを会社の体力に合わせて取捨選択していきましょう。

また、同時に開発をしなければ向上しないサイトの指標を開発部が追うというのはかんげるべき選択肢です。明日は、そちらについて検討してみます。

2012年7月18日水曜日

編成部の進捗状況

次に草薙は編成部を尋ねた。
「脇坂さん、お疲れ様です。KPIの方はいかがですか?」
「ああどうもどうも、草薙さん。丁度探していたところですよ。」
「どうされました?」
「いや、先日の経営会議でとのかくトラックを開始しろと言われたのでいろいろ考えてみたのですが、どうもしっくりとしたKPIが見つからなくてですね、、実はまだ計測を開始していないのですよ・・。」少々バツが悪そうに話すのを聞き流しながら草薙は答えた。
「脇坂さん、でも分からないとはどういうことですか?ウェブの基本であるページビューや、ビジターといったものから計測を開始すればいいのではないですか?」
「そうなんですけど、草薙さん。トラフィックはマーケティング部が持ってくるか来ないかで大きく結果も変わりますよね。それを編成部だけで見ろと言われてもメンバーが腹落ちしないのですよ。」
「なるほど、でもそういった結果KPIの最たるものはどこが計測しても一緒じゃないですか?先ずは無料トラフィックを編成部、有料トラフィックをマーケティング等に分けてみればいいのではないですか?その上で編成部自身がコントロールできる数字をトラックしていけばいいと思います。」
「例えば、離脱率とか、次のページのクリックスルーとか。最終的には流通なのですが、流通は販売部が追うのでその売り上げの更正要素をトラックするのがいいでしょう。」

結局のところ、現場が理解でき、努力できる範囲のKPIを設定し毎日見る癖を持ってもらうことが重要というのはどの部署でも変わりません。

編成部が行なっているか、マーケティング部が行なっているか会社によって違うかもしれませんが、オンラインショッピングの場合、メールマガジンマーケティングを行なっているとおもいます。これらでどれだけのトラフィックを持ってき、どれだけの流通を上がられるかもしっかりとトラックすべきKPIとなるでしょう。

2012年7月17日火曜日

マーケティング部のKPI決定

「浅井部長こんにちは、その後KPIの方はいかがですか?」
「先週丁度ROIが75%になったところです。効果はでてますね」
「本当ですか、凄いですね!KPIシートを見せてもらえますか?」
「もちろんです。」と、見せてもらったシートをみて草薙は顔が曇ったことがバレないように、「なるほど、なかなかの進捗ですね更に頑張りましょう。」といいながらシートの改善点を探した。
先ずは前組織例外なくトラッキングを開始することが重要ですので、少々数字が悪い等はこの際目をつむります。

マーケティング系で重要なのは、各マーケティングチャンネル毎のパフォーマンスをしっかりと把握することです。金額が大きいだけに大きなKPIだけを追っていては中で何が起こっているか分かりません。特にオンラインショッピングでは最小のコストで最大の売上を作ることがマーケティングの目的となります。そして残念ながら往々にして、マーケティング費用を得られた利益から差し引くと赤字になります。すなわち、マーケティングをしなければ赤字にはなりませんが、全体のモーメンタムを作ることができません。いかに少ない投資で最大限の売上を上がるかに注力するためにも、マーケティングのKPIは重要となります。

参考まで一般的にマーケティング部門では、チャンネル毎に、投資額、コスト、クリック数、コストパークリック、注文件数、転換率、売上、コストパー売上をモニターしていきます。

オンラインショッピングでの重要な指標は有料のトラフィックで得られた売上と、無料のトラフィックで得られた売上の比率となります。KPIをモニターしながら立ち上げ当初は有料トラフィックで売上を上げるものの、徐々に無料トラフィックにシフトしていく戦略を立てましょう。

2012年7月4日水曜日

営業部のKPI決定 2

草薙の提案のように、各個人がひっそりとKPIをトラックするのではなく、全社行事として公開してトラックすることで全社の意識レベルが上がります。営業部のKPI管理は地道にコール件数、コンタクト件数等のプロセスKPIのトラックと、業務リードタイムの短縮化、見込み管理の徹底の3つのメソッドで改善していくことが可能です。注意しないといけないのは、コール件数だけではなくコールのクオリティをチェックしなければ特に若い営業マンは電話の件数を増やすことだけに注力をし本質を失いがちになります。

よって営業部の業績向上には先ずマネージャー自信がこの基本を理解し各指標とプロセスの見える化を率先して推進することが重要となります。日報の仕組みの一つとして各営業担当の数字が吸い上げられる仕組みを作ることまではどこの会社もできていますが、それを全社行事として意識向上を図れている会社は少ないのが実情です。意識レベルを上げるためには、ホワイトボードや壁に張り出すことや、各担当の横並びの情報が俯瞰できるような日報を作成し、印刷して配る、毎朝MTGをして数字の確認をする、目標達成者がでる毎に盛大に祝う等、多数の原始的な方法もあります。CRMで効率的に管理できるのは確かですが、この全社レベルの意識アップには何らかの儀式的な手法が有用なことをコツとして心がけると、KPI管理の意識、精度が飛躍的に上がるでしょう。

2012年6月29日金曜日

営業部のKPI決定 1

実際に数字のトラックが始まった翌週、草薙と香川は営業部を尋ねた。
「大川さん、お久しぶりです。」
「ああ草薙さん、何かいろいろ壁に張り出されましたな。」
そう何事も見える化がを徹底し、従業員の意識を徹底することが重要です。
「本日は先日お伺いした業務フローをまとめたものと改善案をお持ちしました。」
「ほう、それは楽しみですな。」
「では早速香川の方から説明させます。」
「はい、大川さん、こちらが現行の業務フローとなり、営業のクローズまで平均で25営業日かかっています。ここの口頭合意から最終的な必要書類回収までの時間を短縮すれば15営業日でクローズすることが可能ではないかと考えております。」
「ほほう、それは目出度い、そんな簡単にリードタイムを短縮できるのなら是非採用したいね。」
「はい、こちらでオンライン登録と同時に必要書類のトラッキングを開始すれば十分可能と思われます。」
「香川君、簡単にオンライン登録とかいうけどね、それはもう1年も前に弁護士と相談して正式契約書にすることを勧められているんだよ。」
このように自身の保身のためにああ言えばこう言うという問答が続くと思われます。ただ大事なのはリードタイムを短縮すれば生産性が上がり、全新規顧客獲得件数が上がることを認識してもらうことです。粘り強く行きましょう。

ちょっとした議論の後、香川が続ける。
「大川さん、次に必要なのが各営業担当の平均的な時間ごとの業務内容です。先日1日営業の平田さんの横に座らして頂き、平田さんの一日の業務状況を調査させていただきました。結果、有効コール数が40件、有効コールの全ての合計通話時間は4.5時間でした。」
「それで?」大川は明らかに領海侵犯だというような不快そうな顔で返答した。
「いえ、本日は今後この有効コール件数と、総合通話時間をKPIにしたらどうかというご提案をしに来ました。」
草薙はすかさず、「またそれとは別にこれらの数字を壁に張り出し、今月の見込みを毎日変更させていくクセ付けをする必要があります。張り出す際に従業員ごとの競争を促すために各人毎の成績を見せるのがいいでしょう。」

2012年6月27日水曜日

実行力が重要

現在の業務フローとあるべき姿の業務フローができたらあとはKPIをトラックして目標に向かって進むのみです。必要なのは先ずはKPIシート、そして毎日徹底して入力することです。

「香川君、いろいろ情報もあつまったので来週の月曜からKPIのトラッキングを始めよう。」
「え?でも草薙さんまだどの部署ともKPIの合意が取れていませんよ?」
「いいんだよ、そんなの。オンラインショッピングをやっていたらどこもKPIなんて一緒だろ?」
「え、まあそうですが、、」と、香川は意外と草薙は強引な人間かもしれないと思いながら頷いた。
「誤解をされると嫌なのでもう少しだけ説明しておくと、基本のKPIがあって、それはもう会社で決まっていると思うんだな。それをいかに現場が徹底するかが成否の分かれ目だと思うんだ。なので、先ずは代表的なKPI管理を始める傍ら、各部署の詳細KPIを合意していけばいい。」
「なるほど了解しました。」

草薙は上機嫌に、「ではうちの利益は売上-仕入原価なのでその売り上げをどう作るかから書いていくと、先ずはトラフィックを呼んで来ないといけないので、訪問者、そして彼らのコンバージョン率、それと彼らの単価、これが基本となる。なので、マーケティング部門はこの訪問者に責任があり、それぞれ有料、無料の訪問者をトラックすることが基本でしょ。」
「はい」
「コンバージョン率は非常に難しいね。これは全部署が協力しないと達成できない。従い、それぞれ良いディールを作るという意味で、購買部、またよいページを作るという意味で編成部。また、お買い物カゴでのドロップを最低限にするという意味でも開発部も関わってくるだろう。」
草薙は続ける、「購買単価に関しても編成のお勧め的ナビゲーションと、開発の買いまわりしやすさも入ってくるので複数部署が担当となる。」
「これだけだと全く各部署がアクションをとってコントロールできませんよね?」
「そう、なのでもっと明確なコントロールできるKPIを各部署に設定するわけだ。マーケティング部には更には会員数を明確に追わせるべきだろうし、ユーザーのリピート率も必須となる。編成部は、自分で努力ができるキャンペーン数や、キャンペーンページのクリックスルーなどがいいだろう。営業はもちろん、獲得サプライヤー数だが、それに至るコール数と、それぞれのステータスの見込数だろう。」

「でもね、香川くんこんなことはさして重要ではないんだよ。重要なのはこれらを決めた後に、各担当が毎日入力すること、その数字を見て毎朝全員が知恵を出して話し合うことが重要なんだ。」

この会話の通り、先ずはKPIを設定して計測を開始すること。開始した後は毎日欠かさずトラックをする環境を作り、皆が数字を向上させる方法を考える習慣をつけること、これが一番重要な要素となります。

2012年6月25日月曜日

KPIツリーの導入

香川が業務フロー作成に精を出している間、草薙は次のステップを考えていた。やはりこの会社はKPI導入の概念の浸透が浅くまだまだ改善の余地がありそうである。
「香川くん」
「はい草薙さん」
「業務フローで忙しいと思うのだがもう一つ進めよう。この会社のKPIツリーを作ろう」
「KPIツリーですか?」
「そう、この会社の売上がどのように構成されているのかを分解するんだ」
「はぃ。。。」
あまりピンときていない香川を尻目に草薙はホワイトボードに「売上=」と書き始めた。
「売上は何で構成されているんだっけ?」と草薙。
「はい、オンラインショッピングの公式ですから、売上=アクセス人数x転換率x客単価ですよね?」
「そうだ。そこから先、どのように分解できるかが重要なんだ」
草薙は続ける
「例えば、アクセス人数にはお金を掛けて呼んだ有料トラフィックと、自然にやってきたトラフィック無料トラフィックの2種類があるじゃない?転換率はそれぞれのトラフィックソースによって違うかもしれない。もちろん客単価もだ。更に言えば商品数やサプライヤー数、キャンペーン数やイベントページ数、価格の競合優位数などもあげられるかもしれなし。それらを全てコントロールできた時に売上が上がるチャンスがある。KPIは決して売上が上がることを保証しないが、これらの数字がきちんとトラックできる限りおいて非常に有用なツールとなるんだよ」
「なるほど、ではまずこれを全社員に理解してむらう必要がありますね」

KPI管理の基礎となるこのKPIツリーについては経営陣で徹底的に協議し、全従業員が理解するようにしていく必要があります。一旦KPIツリーができれば、それを壁に張り出すなどし全従業員の意識の徹底をするとより効果的です。

2012年6月22日金曜日

ヒアリング総括と業務フロー

主要部署とのヒアリングが終わり草薙は香川と総括ミーティングを実施した。
「どう思う香川くん?」
「そうですね、全体にKPI管理が浸透しているようには見えませんでしたね」
「まあ、それは彼らにとっても初めてだから仕方ないよね」
「一番改善しやすそうなのはどこだと思う?」
「そうですね、見込み管理とデイリーミーティングをしていない営業でしょうか?」
「あとはKPIを追っていない編成チームkも良さ気に感じました」
「マーケティングは数字の見える化はできても改善できるかが分からないのと、開発はも同じですね。」
「その通りだね」と草薙は頷きながら香川は結構使えるのではないかと思い始めた。
「大事なのはまだ皆んながKPIが新しいと思っている間に成果の出やすいところで成果を出しすんて、全社員に注目してもらうことだね。最初は絶対に成果を出さないといけない。」「はい」と香川。
「ではゴールは営業の見込み管理が出来るようにするのと、日々その数字が全員に見えるように貼りだし、それを囲んで朝のショートミーティングをすること、結果としてそれらの合理化に伴い生産性を上げてクロージングまでのリードタイムを短縮することとしよう。先ずは手土産が必要だな。」
すかさず「それが業務フローということですね」と香川が続ける。
「その通り、じゃあ悪いけど営業部と話しながら現在の業務フローを作成してもらえる?」
「はい、業務フローですね。草薙さんすみません、実は作ったことがなく何かのひな形か何かを頂けると助かるのですが」
「ないねぇ、、前職では持ってたんだけどさすがにもってはこれないしさ。ネットで調べたら出てくるよ。でも基本はY軸に登場人物、X軸に時系列として、左から右にモノと情報とお金の流れを書いていけば大丈夫だよ」
「あ、はい、モノと情報とお金ですね。。」

こうして香川の業務フローとの奮闘が始まった。

「システム開発も結局この業務の定義が重要となるんだ。なのでしっかり勉強しといてね。」

「あ、はい。。」とシステム開発経験などない香川は首をかしげながら頷いた。
業務改善には先ずは現状の業務フローの確定とが重要。しっかり準備をしていきましょう。

2012年6月19日火曜日

開発部ヒアリング

続いて開発部の田中部長を訪問した。
「田中部長、お疲れ様です。早速なのですが開発部のKPIがあるのかないのかも含めてどのような状況か教えてもらえますでしょうか?」
「草薙さん、言うのは簡単なのですがなかなか開発では思うようにいかないのですよ。メンバーは夜遅くまで頑張っているのですがなかなか追いつかずに最近は納期に遅れることもしばしばあります。社長には人員増加をいつも相談して入るのですがなかなか許可がおりません。本日は逆にどのように管理したらいいかお知恵を拝借しようと思っていたのですが。」
「なるほど、ただ開発部ですので当然ガントチャート等はお使いなわけですよね?」
「ええそれはもちろん。こちらです。日々の業務はこれで管理しておりますが各エンジニアのKPIとなると管理ができていないというか、何を設定したらいいか分からないというのが本音ですね」
「なるほど、実は開発部の生産性をKPI管理だけであげようとするのはどこの会社でも少々厳しいというのが本音なのですよ」
「そうなのですね、それを聞いて安心しました」
「ただ、とはいえ全ての基本は各人の活動単位がわかっていることです」
「はあ・・」
「自分達が何に工数を使っているかがわかって初めて、本当の意味での必要リソースの過不足が分かるのです。従い、先ずは日々どの作業にどれくらいの時間を使っているのかを明確にするところからかと思います。」
「それはガントチャートで管理していることになっているのですが、なかなか実績を入力しないメンバーも多くて」
「そこですよ、田中さん。ビジネスサイドも開発サイドも基本は同じだと思うのです。結局は現場が徹底してやり切ることがKPI管理の基本だと思いますし、勝ち続ける唯一の姿勢だと思います。」

初回のミーティングにしては熱弁しすぎたと後悔しながら、草薙は田中にお礼をいい自席に戻った。

「さあ明日から具体的な改善策を考えていこう」と決意し帰途についた。

2012年6月18日月曜日

編成部ヒアリング

つづいて草薙は編成部の脇坂部長を訪問した。
「脇坂さん、KPI担当のオペレーション室の草薙です。本日はお時間ありがとうございます。」
「草薙さんこちらことお待ちしておりました。」
「さっそくですが編成部のKPIについて教えて頂きたいのですが。」
「もちろんです。編成部では社長の指示でビジター数とページビューを追っています。ただ正直なところビジター、ページビューともにいかにマーケ部がトラフィックを送ってくるかにかかっているんですよね。なので正直なところあまり力を入れてトラックしていません。何かアドバイスがあれば是非お聞きしたいと思っていたところです。」

草薙はまた内心にやりとしながら平静を装い、「もちろんです。」と答えた。
「脇坂さん、別件ですが編成チームの生産性はどう見られていますか?」
「みんなスキルが高いいいチームですよ。ただ問題はいろいろなチームからいろいろなリクエストが来るので慢性リソース不足ですね。なかなか納期通りに納品できません。一層のことキャンペーンの数を減らすべきだと思っています。」

この編成部の事例では最もよくありがちな誰かがやれと言ったのでやっているが、どうも自分はしっくりこないという例です。そして編成部でよくありがちなのが美的ディテールにはこだわるが、売上にはこだわらないという態度です。オンラインショッピングをやっている限り、デザイン大賞を狙うのではなく、いかに売れるページを作るかに専念すべきです。KPIは設定の仕方によりそうした意識改革もサポートすることができます。また本件の場合は、何か知らないが忙しいという状況ですので、同時に業務フローの見える化を通して、編成部全体の生産性アップに貢献できる可能性も非常に大きいと考えられます。KPIマネジメントとは単に数字をトラックするというものではなく、現場の見える化を通しての業務改善と社員の意識改革が伴うものです。その点を忘れずに推進をして行きましょう。

2012年6月14日木曜日

マーケティング部ヒアリング

日を改めて草薙はマーケティング部長の浅井部長と対面しました。
「草薙さん、いろいろと噂は聞いていますよKPIは私の大好きな管理指標でして、できることなら何でも協力しますから言って下さいね」

草薙はこの下手に出る浅井を警戒しながら話を始める。
「浅井さん、こちらこそよろしくお願い致します。今大好きとおっしゃいましたが、ではすでにマーケティング部のKPIは設定されているということでしょうか?」
「あたりまえですよ、こちらです」
と、浅井は自分のパソコンをスクリーンに投影しながらGoogle Adwordsにログインをした。
「今やっていることは、CPCを20円以下に設定し、限られた予算でなるべくクリック数をあげることです。同時にROIの目標を10%に設定しており、日々それを目指してチューニングしています。」
「なるほど、コンバージョンレートは見ていますか?」
「見ているけど主要な指標とはしてないですね。コンバージョンは購買サイドの商品への目利きや値段に左右されますからね」
草薙は議論をしかけたいところをぐっとこらえて次の質問に移った。
「Google以外はどうですか?」
「価格比較サイトやアフィリエイトをしていますが大した金額を投入していないのでクリック数とROI以外は見ていないですね」
「全体には月いくらの予算を使っていますか?」
「月によりますが6000万円くらいでしょうか?」
「そのうちGoogleにはいくらつかっていますか?」
「先月で2000万円くらいですかね」
大きいとはいえ全予算の3分の1しか使っていないGoogleしか管理していない、またしていといってもGoogle Adwordsのコンソールを見ているだけのこのマーケティング部長はきな臭いとと思いながら話を円満に終わらせ草薙は退室しました。

マーケティング部隊は効果が出てもでなくても予算がつき、また効果の出し方が非常に分かりづらいだけに、往々にして本ケースのように権限を誇示するが、自部署についている予算金額を守りたいがために自己正当化しがちな責任者が多いようです。こういう人達には自尊心を傷つけないよう見える化をしながら外堀を埋めていく必要があります。

2012年6月13日水曜日

各部署ヒアリング

草薙は現場主義を学んできたため、当然最初のステップは現場のヒアリングとなります。組織図全体を見渡して最も手をつけやすいのが営業部、また最も数値管理が進んでいるべき部署がマーケティング部と判断しました。

営業 大川部長とのミーティング
「大川さん、初めまして草薙です。KPI推進担当となりましたので今後共よろしくお願いします。」
「ふぅん、KPIね。まった新社長は現場も知らずにアメリカかぶれした思想ばっかり持ち込んで困った人だね。で、何を手伝えばいいの?」
「先ずは大川さんの部署での営業成績の管理について教えていただきたく。」

このようにいかに社長直下といえ、概ねKPI担当に対しては各部署の責任者の口調は冷たいものになります。この程度の抵抗にあって戸惑っているようではKPI担当は務まりません。意にかけずどんどんと要件を推進します。

「うちは40人の部隊で各営業マンが月10件の新規サプライヤーを探してくることがノルマとなっている。なんでもいいというわけではない。コマースフロンティアの選定基準に合致した選りすぐりのサプライヤーを獲得してくる義務がある。」
「なるほど、どのように管理されていますか?」
「今度営業会議に出てもらえば分かるが、40人が各5チームに別れており、それぞれのチームリーダーが数字の進捗とパイプラインを報告することになっている。そこで遅れているチームがあればはっぱをかけてリカバリーさせるということだよ」
「日々の管理はどうされていますか?」
「各リーダーが自身の裁量で部下をマネージしておる」

なるほど、と頷きながら草薙は内心ニヤリと笑いました。通常の会社ではこの週1回の営業会議が基本となりそれ以下のレベルまだ管理できていないことがほとんどだからです。また、進捗とパイプラインの管理はできていますが、着地見込みの管理ができている会社が意外と少ないと見受けられます。そういう意味で草薙は早くも改善の余地があると判断したわけです。

草薙は続ける「全体の達成率はどのような推移ですか?」
「最近は競業状況も激しく苦戦しておる。ここ5ヶ月は未達成で達成率が70%程度となっている。」
「なるほどそれは由々しき状態ですね」
「はっはっは、言うのは簡単だよ、何なら草薙君、君がやってみたまえ。」
草薙は受け答えせず続ける「電話件数等は管理していますか?」
「基本は社内にいるなと指導している、社内にいる間は受話器をガムテープでくくりつけとけと言っておる。まぁ典型的な営業部だな。がっはっは。」

草薙はこのミーティングで営業部の業務フローの作成支援を快諾してもらい、それが第一歩と言いながら次の行動に向け、電話件数と、会話時間管理、獲得見込み管理、リード数管理とリード数増加に向けた取り組みを改善点としてメモをして弦巻社長に報告した。

2012年6月12日火曜日

新連載 草薙のKPI導入記

本日からストーリー仕立てでKPI担当の直面する課題を個別に見ていきましょう。

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コマースフロンティア社は日本を代表するオンラインショッピング会社です。以前アメリカのビジネススクールに留学したことのある新社長弦巻直々の号令でKPIマネジメントが導入されることとなりました。弦巻社長は社長直下にオペレーション室を設置、前職での経験を買われ中途採用ながらこのオペレーション室初代室長に選ばれた草薙室長。着任早々新人担当の香川と二人三脚で現場との格闘が始まります。

初日
「香川君、先ずはコマースフロンティアの組織がどのような構造になっているのか組織図をもらえる?」
「はい草薙さん、当社の組織はこのようになっています」

※組織図を提示

「社長直下に各部署が並列しています。先ずはマーケティング部、ここではブランディングとパフォーマンス・マーケティングの両方を担当しています。次に当社は当然オンラインリテールですので、サプライヤーから商品を買い付ける購買部、そのサプライヤーを探してくる営業部、サイトを作る編成部、消費者からの問い合わせを受けるユーザーサービス部、開発全般を実施している開発部となっています」
「なるほど、では各部署のKPIは?」
「KPIですか、、?もちろん流通額やサイトのビジターを追いかけています」
「いや各部署の指標を知りたいのだけど」
「草薙さん、すみません自分では把握していませんが、恐らく流通額など全社的な指標しかないと思われます」

恐らくオペレーション室を作りKPIを導入しようとするとこのような会話が繰り広げられると思われます。先ずは会社の組織を理解し改善効果の高い部署から手を付けるのが王道となります。これはもちろん懐疑的な社員が多い中素早く実績を見せないとオペレーション室自体の立ち位置が危機にさらされるからです。