前回の続きのオンラインショッピングの無料トラフィックについて考えてみます。今回はその中でも最も重要なメールマガジンについて詳細を検討してみましょう。
4.内部メルマガ
なんだメルマガか、と見過ごされがちなマーケティングチャンネルですが、こちらは未だに非常に重要なチャンネルです。先に外部メルマガを説明しましたが、当然外部メルマガは有料トラフィックであり、配信数毎、クリック毎、販売毎に等、業者により違いますが何らかの対価を貴社は業者に支払うことになります。しかし、一方でこの内部メルマガは配信毎に課金をされない、いわば唯一自分でコントロールできる魔法のようなマーケティングツールとなります。(もちろん配信用に外部サービスを使っていれば、配信毎に課金をされることになりますが、外部メルマガに比べると比較にならない程安価な投資となります)従い、先ずやらないといけないのはメルマガ会員の獲得です。貴社のサイト随所にメルマガ申し込み画面を付けるのはもちろん、メルマガ申し込み専用画面も作りこみましょう。そこには過去のメルマガのサンプルなどを併設して置いておくと効果的です。Cookieを操作して、初回ビジターには必ずメルマガ登録のライトボックスをポップアップさせるのも有効です。また、Javascriptを駆使して、ブラウザーの一番下に動的にフロートして表示されるライトボックスも最近は人気です。もし、貴社システムでクーポンを作成できるのであれば、登録に対してクーポンを発行してもいいでしょう。発行金額は先に説明したCPOや顧客の生涯価値などで決定しますが、顧客にとっても十分魅力的な金額である必要があります。
メールマーケティングは既に10年以上の実績があり、他のメディアが成長してきている中で、現在でもダントツの効率的なメディアとして君臨しています。貴社の数少ない顧客との接点として、会社のマーケティング方針と合致したコンテンツを購読者に届けるようにしましょう。このメールマーケティングの唯一の欠点は、効果的なだけに多くの業者がメールマーケティングを実施しており、非常に多くのメールがインターネット上を行き来しています。それに伴い、メールオペレーターや、インターネットサービス・プロバイダーにスパム判定をされることも多くなって来ています。一度スパム判定されるとユーザーの受信箱に届けるのは至難の業となります。従い、ここは必要投資と考えメール配信率アップのコンサルティングを頼む等、しっかりと配信されるよう投資をしていく必要があります。届かないメールは送っていないのと同じであることを忘れないようにしましょう。
メールマガジンは非常に重要なマーケティングツールだということをご理解頂いたので、ここでは、メールマガジンのKPIについて考えてみます。後ほど顧客クラスターの重要性については別途説明しますが、ここではメールマガジンそのものの管理に必要なKPIについて説明します。メールマガジンのパフォーマンスは下記の公式によりトラック可能です。
「メールマガジン経由の売上」=「配信数」x「配達率」x「開封率」x「クリックスルー率」x「転換率」x「単価」
このように書くと非常に難解ですが、それぞれはさほど難しくありません。順番にみていきます。
配信数
先ずは如何に大きなユーザーベースを持っているかが勝負になります。ビジネスを始めたばかりの時期は如何にユーザーのメールアドレスを獲得するかに注力しましょう。先ずは貴社が何者かを分かってもらわないといけないため、ブログやツイッター、フェイスブックなどを活用し情報を発信します。次に貴社のサイトの特設ページでいかに貴社のメールマガジンが楽しくユーザーにベネフィットがあるかを訴求します。トップページはもちろんあらゆる箇所にメルマガ登録ボックスを設置します。また、cookieを管理できる技術力があるなら、cookieのない新規ユーザーにはメルマガ登録のライトボックスを強制表示し入会を促すのも効果的です。その際、更にクーポンを追加すると効果は上がります。この獲得したベースを毎日既存ベースに追加していきます。実はこの配信数は次の配達率に非常に関係してきます。やみくもに質の悪いメールアドレスを増やすとスパム業者として扱われ取り返しがつかなくなりますので配達率をモニターしながら推進します。
配達率
持っているメールアドレス全てにメールを配達することは通常出来ません。このように書くと、自分のメールが届かなかったことなどほとんど無いよとおっしゃる方も多いと思います。しかしながら、貴社がサードパーティのメール配信業者を利用している場合はさほど気にする必要はありませんが、自社で送信する場合は毎日1万通を超えたあたりから注意が必要です。貴社のビジネス規模が拡大するにつれて大量のメールを送るようになると思いますが、大量のメールを送る企業をインターネット・プロバイダーやGmail、Hotmailなどのメールサービスプロバイダーは嫌います。嫌うというと語弊がありますが、大量に送れば当然受け取りたくない人々の数が増えます。数が増えると当然プロバイダーは注意して観察を始め、ある一定の閾値を超えると、そのそも貴社からのメールを受け取らないか、受け取ってもユーザーのスパムボックス(ゴミ箱)に届けるということを始めます。特にユーザーはプライベートで使うサービスに会社のメールアドレスは使わずに、GmailやHotmailなどを使う傾向があります。そういうユーザーが多い、Gmail、Hotmailも扱いに慣れており、いとも簡単にスパムトラップに引っかかってしまうでしょう。先述のようにメール配信率改善コンサルに頼むのもありですし、またしっかりとセグメントをして配信していくことで、ユーザーとの関連性があがり開封率の向上も期待出来ます。いずれにせよ本件は会社の成長と共に必ず直面しないといけない問題ですので、地道に取り組みましょう。
開封率
届けることができたら今度は開封してもらえるかが課題となります。開封率の多くはメールの件名に依存しています。件名にユーザーの名前を記載したり、直近の購入などユーザーの過去のアクションに起因した件名を記載すると開封率が上がります。送料無料や激安、○○円獲得しました!、的なオファー色が強いメールはプロバイダーによってスパム判定される確度も上がりますので、結果を見ながら慎重に適用します。ここでもやはり強いのはクーポンです。新鮮味が薄れない程度にクーポンを織り交ぜながら配信していきます。開封されないメールは配信されていないのと同じです。配達率を改善する業者にいくら高いお金を払っても、メールのコンテンツそのものに魅力がないと全くのお金の無駄遣いになりますので、チームを作ってしっかりとフォローアップしましょう。
クリックスルー率
やっとの思いでユーザーのメールボックスに到着し開けてもらったとしてもクリックして、貴社のサイトに来てもらわないと意味がありません。従い、何クリックされるか、何人のユーザーを本サイトに運んだかが重要な指標となります。ここでのクリックスルー率の計算方法は、総クリック数÷総オープン数でよいでしょう。ユニークをカウントしたりいろいろな方法がありますが、トレンドを把握するだけなので簡単な方法で十分です。昨日のメールより今日のメールのクリック数がなぜ悪いのか、それはオファーが魅力的でなかったのか、それとも送るユーザーベースを間違ったのか、それともそもそも配信されていないのか、開いていないのか毎日分析とフィードバックの時間を設けて改善しましょう。
転換率と単価
本サイトに来てからのKPIは通常のKPIと同じになります。そのメールマガジンからいくらのクリックを受け取り、何件の注文に結びついたのか、その転換率(CVR)と単価を毎日トラックします。この内部ベースへのメールマガジンは他のマーケティングチャンネルと比較してパフォーマンスを測るべきものですので、簡単な比較表を作成して管理します。マーケティングチャンネルにはお金を払っていますが、この内部メールマガジンには払っていないので、先ずはユーザーベースの拡大に伴う、クリック数を増やす努力と、それ経由でタイムリーにユーザーの欲求にあったものを配信するきめ細かい配信コンテンツ管理で、将来的には最大のマーケティングチャンネルにすることが当座の目標となります。
コンテンツ
最後にメールマガジンのコンテンツについて考えてみます。皆さんも多くのメールマガジンを受信されていると思います。貴社のマーケティングチーム、編成チームに必要なのは、競合を含めた売れているオンラインショップのメルマガを毎日受け取り、何がトレンドなのかを理解することです。商品そのもののピックアップに気づきがあるかもしれませんし、レイアウト、配色等デザインに気づきがあるかもしれません。また、最近アメリカのベンチャー等で流行っているのは、少々砕けた会話形式でメールマガジンを送ることもよく実施されています。貴社のブランディング戦略もあるでしょうから、全てを真似るわけにはいかないとは思いますが、是非参考になる部分は吸収させてもらい、よりよいコンテンツを提供できるようにしていきましょう。