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2013年11月9日土曜日

実践!成功するKPI管理 第3回

KPI and KRI

[KRIとKPIの違い]

しばしワークショップの質問時間に、「KRIとKPIの違いは何か?」という質問を受けます。

車のスピードメーターはRI(Result Indicator 結果指標)とPI(Performance Indicator 業績評価指標)の違いは何かを明確に教えてくれる例となります。車が走っているスピードはスピード自体が、どのギヤとどの車重と、どのガソリンなどという複数の変動要素からできているためRIとなります。PIの例としてはどれほど経済的に車が巡航しているか、エンジンがどれほどの温度を保っているかなどというものが考えられるでしょう。

多くのマネジメントに関する書籍はKPIをリード(将来見込み)とラグ(過去)によって説明しようとしています。しかし航空会社の例をとってみるまでもなく、定時発着率というKPIは、過去のことも示しますし、それにより生み出される問題のことも示します。従い、リードとラグという見方でKPIを捉えることは適切ではないといえます。

KRIとRIは結果を計測する指標です。KRIの多くは月次や、四半期毎に管理され、RIはより短い期間、例えば昨日の売上などという形で管理されます。PIとKPIは、下記、現在、未来を計測するための指標となります。現在指標とは24時間毎日計測される指標のことを指します。未来指標とはアクションが実行されるための未来に対するコミットメントの指標のことを指し、例えば次の重要顧客との会合の日時などを指します。貴社の中のKPIもこの現在か将来かという軸で分類することが可能です。ワークショップで私は参加者にいくつかの重要指標をリストアップしてもらいます。そしてそれぞれの時制に分類してもらいます。

多くの組織でその習慣を変えるためには、将来どのようなアクションが取られるかが明確に計測されなければなりません。将来指標の例は下記のようなものを含みます。

1.インターネット関連企業でイノベーティブな組織になるためには、各取り組みの数を計測する必要があります。どれだけの取り組みが明日、次の週、来月オンラインになるのかを計測することが重要です。

2.売上を増加させるためには、既に実行されたか明日、来週、来月にスケジュールされた顧客とのミーティング数を計測する必要があります。

3,重要顧客との親密な関係を継続するためには、顧客と合意した次のソーシャルな会合(会食、スポーツなど)がリストアップされている必要があります。

4.CEOのプロフィールの質を維持するためには、PR(パブリックリレーション)とそのイベントが先立ってスケジュールされている必要があります。


これらの将来指標は週次ベースでCEOにレポートされるべきです。CEOは数週間目標と乖離があるのを黙っているかもしれませんが、すぐにその目標との乖離は何故おきているのかを質問し始めるでしょう。そうすることでマネージャーは次の週までに将来のCEOからの居心地の悪い質問を再度されないように何らかの対策を講じようとするはずです。このモチベーションこそがKPI管理の原動力となります。

2013年11月5日火曜日

実践!成功するKPI管理 第2回


[KPIの7つの特徴]

KPIには下記のような7つの特徴を見て取ることができます。

1.KPIはファイナンス関連の指標ではありません(ドルや円では表示できません)
2.頻繁に計測される必要があります(24時間、日次、少なくとも週次)
3.CEOか批准するシニアマネージャーによって推進される必要があります
4.スタッフによるどういうアクションが必要かが明確に示される必要があります
5.責任はチームレベルに落ちる必要があります(CEOはいつでもチームリーダーを呼び出し必要なアクションを取らすことが出来る必要があります)
6.会社の業績に大きなインパクトがあります(いくつかの重要成功要因やバランスコアの成否に直結する影響力をもっています)
7.的確なアクションが自然に生み出されます(生煮えのKPIでは変化への気付きが実行までおちません)


1.ドルマークや円マークをつけた時点でそれはKRIに変換されたと考えられます。KPIはそれらのKRIよりもはるか深くに存在すべきものです。例えば売上の主要な割合を占める顧客とのコンタクト回数などが考えられます。

2.基本的には24時間365日、日次、最低でも週次で計測されるべきものです。月次や四半期、半期ごとの指標がKPI足りうることはありません。というのも物事が起こった何日も後に計測しているのであればその指標が貴社のビジネスの「Key」であることはないからです。KPIとは現在もしくは未来に起因する指標であり、過去の出来事を振り返る指標ではありません。残念ながら多くの企業では過去の指標を管理しています。

3.全てのKPIには会社の業績を変える力があります。それはCEO自らが多くの時間をさいて監視しているからです。CEOは必要であれば毎日現場の責任者を呼び出したり電話します。当然毎日CEOから追求されるのは現場からすると心地よいものではなく、それ故に大きな推進力が発生します。先の航空会社の例では生産的でイノベーティブなプロセスは同じ過ちを防止するために生み出されました。

4.KPI自体がどのようなアクションが必要かを教えてくれます。再度先の航空会社の例では、定時発着率の低下というKPIは、KPI自らが損失を埋めるために何らかのアクションをしないといけないと働きかけました。クリーニングスタッフ、地上スタッフ、交通管制担当者、全ての従業員が1分を削りサービスレベルを維持し、向上するために全力を尽くしました、または尽くす意味合いをKPIが働きかけて教えたといえるでしょう。

5.KPIは各チームの活動に結び付けられる必要があります。別の言い方をするとCEOはいつでも担当のチームの誰かを呼び出し「何故?」と聞くことができます。従い資本利益率などはKPI足りうることはありません、何故ならそれは各チームの活動に結びつけられないからです。それは各チームの総合的な活動によりもたらされる結果だからです。

6.会社の業績に大きなインパクトがあります。いくつかの重要成功要因やバランスコアの成否に直結する影響力をもっています。言い換えると、CEO、各マネージャー、スタッフがKPIに集中している時、組織はひとつの目標に向かい自走できます。航空会社の例では、定時発着率が全てのバランススコアの達成に必要な活動につながりました。

7.KPIを設定する前に、それらは各マネージャー、スタッフに対して望ましい振る舞いをもたらすかどうかをテストする必要があります。一方でKPIが全く機能しない振る舞いをもたらした事例は多数あります。次回に2つの事例を説明します。

2013年10月28日月曜日

実践!成功するKPI管理 第1回

今月より新連載「実践!成功するKPI管理」を開始致します。本コンテンツはDavid Parmenter氏の著書Key Pefromance Indicatorの要素を分かりやすく説明したものになります。


イントロダクション

日本経済の停滞とともに、生産性向上とそれに必要なKPI管理が叫ばれて久しいですが、実際は多くの企業がKPIを間違った形で運用しています。KPI管理を始める前にまずKPIには4つのタイプがあることを理解する必要があります。

1.Key rusult indicators (KRIs) はいかに貴社が重要成功要因を実行したかを示します
2.Result indicators (PIs)は貴社は何を実行したかを示します
3.Performance Indicators (PIs)は何をしないといけないかを示します
4.KPIはどのように貴社のパフォーマンスを劇的に上昇させるかを示します

多くの企業で使われているKPIはこれら全てを混同して使われています。
玉ねぎに例えると玉ねぎの皮がKRIとなり、どのような見た目、結果が得られたかを見ることができます。そのKRIの皮を剥くことで、RIやPIを見ることができ、その中心に位置するのがKPIとなります。

[Key result indicator]
ではまずKRIとはそもそも何でしょうか?KRIは一般の企業ではよくKPIと混同して使われています。KRIの代表例としてあげられるのが、下記となります。

・顧客満足度
・営業利益
・顧客の収益性
・従業員の満足度
・投資回収率

これらの指標の一般的な特徴は、多くがあらゆる行動の結果を示すものということができます。KRIは貴社が暗闇の中、問題なく飛行しているかという結果を教えてくれます。しかしながら、それらの結果をどのように向上したらいいかは教えてくれません。これらのKRIは取締役会など日々のオペレーションに携わっていない重役への報告には意味をなしますが、日々のオペレーションには意味をなしません。

KRIは通常KPIよりも長い期間の結果を示します。大抵の場合、月次や四半期ごとの報告書に用いられ、KPIのように週次や日次の報告に使われることはありません。企業のガバナンスのために各種の報告書が必要であり、その中のハイレベルな情報として10個ほどのKRIが記載され、その下にバランススコアカード形式に各種RIやPI、KPIが含まれるという内容が一般的に使われます。

[Performance incicatoreとResult indicator]
通常KRIとKPIの間に80個ほどのPIやRIが作成されます。PIは重要ではあるものの企業の主要な指標ではありません。むしろ各チームがいかに会社の目標に沿って動くかという指標になります。PIの代表例としてあげられるのが下記になります。

・トップ10顧客による売上の上昇率
・過去30日の顧客による改善推奨の数
・主要顧客からの苦情件数
・主要顧客への納品遅れ

一方RIは活動のまとめということができます。通常全てのファイナンス情報はRIに分類されます。売上の分析などは最たる例で、日々の営業活動の大きな助けになる一方、その数字の変動を理解するには、各数字をもたらした個別のアクションを確認していく必要があります。RIの代表例としてあげられるのが下記になります。

・主要商品の粗利益
・昨日の売上

[Key peformance indicator]
それではKPIとは一体何でしょうか?KPIとはその組織の現在のそして未来の成功のためにもっとも重要でクリティカルなパフォーマンスを測るべき指標となります。往々にしてKPIは新しいものではなく、ただ重要と認識されていないだけのことが多いといえます。

ここで1つの例を紹介します。

1980年代にBritish Airwaysが劇的に業績を回復させたのはある一つのKPIに紐付けさせたからだといわれいます。それは定時発着率です。もし定時に発着できなかった飛行機があれば、各空港のBAの責任者はボスから直接の電話を受けて事情の説明と対策を施さなければならなくなりました。この仕組み化と業績の向上はみごとにリンクしていきました。定時発着できない飛行機は下記の弊害をもたらします。

・乗客のホテル代負担や、空港からの追加費用徴収などあらゆる費用を増加させます
・顧客の満足度を劇的に低下させます
・追いつくためにより燃料を使うのでオゾン層の破壊を進めます
・従業員に同様の失敗を繰り返す悪い癖がついてしまいます
・サプライヤーとの関係を悪化させ結果、より貧弱なサービスを提供することとなってしまいます
・従業員が毎回火消し作業に跳び回ることにあり、従業員の満足度が低下します

次回へつづく>>

2013年8月28日水曜日

オンラインショッピングのKPIまとめ - 連載最終回


各戦略・戦術の優先順位

オンラインショップも小売業ですから、小売業に王道はないようにオンラインショップの運営にも王道はありません。しかし、そこにいたる各要素の働きを理解しておけばにトライアンドエラーによる時間とお金の無駄遣いを未然に防ぐことが出来ます。中には全て指摘された通りにやったが結果が上がらないという方もいらっしゃるでしょう。むしろ多数かもしれません。そのような時は再度下記の順番でトライしてみて下さい。

1.先ずは入り口商品を作る

オンラインショップはまず商品づくりからです。逆にいうと入り口商品がないのにオンラインショップを初めてはいけません。必ずこれなら間違い無く消費者は買うだろうという商品を最低1つは作って下さい。

2.商品ページを最高に仕上げる

1で用意した入り口商品用に最高の商品ページを作ります。写真はプロが撮ったような出来である必要がありますし、複数枚のカットが必要です。ページ自体は使用しているイメージがわくように、使用シーンを想定した写真を多用します。それに必要なテキストもしっかりと記載します。

3.SEOはそつなくこなす

この最高のページに訪問客が来ないと始まりません。お金がないから人を呼べないよという前に最低限のSEO対策はしましょう。Googleの推奨している項目を実施するだけでも効果がでます。最低1つのキーワードは検索結果の1画面目に出てくるまで継続しましょう。

4.トラフィックを購入する

次にいよいよ作ったページにトラフィックを送ります。ドキドキする瞬間ですね。しっかりとキーワードを選び無駄なコストをかけないようテストをしながら進めます。200クリックあった時点で1つも購入がない場合は、キャンペーンそのものか商品の魅力に問題があるはずです。何が問題かつきとめ結果がでるまで頑張りましょう。

5.リピーターになるためのフォローアップ

入り口商品が売れ出したらリピータのフォローアップも同時に開始します。目先の売上が欲しくて新規購入者に目が行きがちですが、リピートしない店に未来はありませんのでビジネス開始当初からしっかりとフォローアップします。

6.品揃えを増やす

店のサイクルが回りだしたら次は品揃えを増やす時です。誰もが知っている型番商品から、オリジナル商品まで幅広く増強します。ポイントは型番商品は価格勝負が否めないので薄利で販売しますが、オリジナル商品でしっかりと利幅を取ることです。自社の商品の利益率をしらずに投資はできません。利益率からしっかりとCPAを計算し必要な商品戦略を立てて実行していきます。

7.離脱率対策をする

店に人が来だすとどこで彼らが離脱しているかもアナリティクスを通して確認することができます。業界スタンダードのシステムを導入しているとしても改善点は多数あります。しっかりと一つづつ対策を続けます。これは終わりのない戦いとなります。ABテストを実施し常に改善をしていきましょう。

8.トラフィックを増やす

ここまで来たらひと通りのサイクルは回っているはずです。貴社がどれだけ成長したいかに合わせて投資戦略を決めます。投資戦略に沿ってしっかりと結果をモニタリングしながらトラフィックを増やしていきます。決して、予算をつけたから使いまくろうなどとは思わないように。

9.購入者を増やす

更なる新規購入者を目指す時です。投資戦略の一部をCPAの安い戦略商品とメディアチャンネルに投資し、新規購入者を劇的に増やします。

10.リピーターを増やす

クラスター管理を導入し、それぞれの上位クラスターに移行するよう全てのコミュニケーション戦略を練り直し、ロイヤルカスタマーの数を増やします。


簡単に聞こえますが変数の管理とバランスが難しい取り組みになります。特に苦労するのがトラフィックを購入するところでしょう。特に品揃えの少ない時期は苦労します。従い必ず売れる入り口商品で顧客をつかみリピートさせることが重要ですので、先ずは入り口商品がGoogleから継続的に売れるよう全力を使います。その後試行錯誤をしながら有料トラフィックをふやしつつ、ユーザーをリピートとして定着させるよう頑張りましょう。



以上、オンラインショップで継続的に売上を上がるというのは非常に大変なことだとご理解いただけたのではないでしょうか。しかし、同じ努力をするにしてもオンラインショッピングの算数を理解し科学的に攻めるか、直感だけで攻めるかにより違った結果がもたらせれるというのはご理解いただけたのではないでしょうか。是非、本連載を参考に貴社の売上を向上させて下さい。

本連載では随所にKPIという言葉を使用していますが、なるべく読者の皆様が気負わないように自然な形で理解できるように構成してあります。とはいえ、各指標の管理にはそれなりのツールが必要です。是非KPI Masterを貴方の相棒にご選択いただければ幸いです。

2013年7月10日水曜日

オンラインショッピングのライフタイムバリュー(LTV) - 連載第9回

ライフタイムバリュー(Life Time Value: LTV)

オンラインショッピングを経営する皆様には既に重要な指標として知られているかと思いますが、リピート率を語る時同時に重要になるのが貴社顧客のライフタイムバリュー(Life Time Value: 以下LTV)です。この指標は実は貴社の売上規模以上に重要な指標と言うことができます。何故なら高いLTVを維持しているということは高いリピート率を維持しているということであり、高いリピート率を維持している限り、ユーザーが将来会社にもたらしてくれる利益水準までは新規顧客に投資をしても、その投資は将来会社に返ってくるといえるからです。

先ずは分かりやすい事例から説明します。
もし仮にある会社の1顧客の将来にわたり会社に貢献する利益の平均が3000円だとします。であれば新規顧客の獲得に2900円支払ったとしても100円の利益が出ることになります。従いこの会社は新規顧客獲得キャンペーンに2900円まで支払っていいことになります。この数字が分かっているのと分かっていないのとでは経営判断上大きな違いが出てきます。貴社が既に1年以上営業しているのであれば、今すぐLTVの計算をされることをお勧めします。

LTVのコンセプト

LTVの詳細な計算方法の説明にに入る前にLTVのコンセプトを理解する必要があります。大まかにいうと、各特定期間のユーザーの固まりを1世代と考え、その世代のユーザーが次の世代にどれくらい貢献しているのかを統計的に見るコンセプトのこと意味します。例えば2010年の総新規ユーザー数が50000人いたとするならば、その50000人が、2011年、2012年、2013年の売上にどれほど貢献するかを可視化します。この各年代の世代を毎年計算し、翌年以降にどれほど貢献しているかを各世代毎に計算していきます。1年を1世代とすると最低でも5年程度の営業年数がないと計測できないため、営業年数が少ない場合は4半期毎を1世代として計測を開始することを推奨します。このように全世代を計算した後、ある特定の年もしくは四半期の売上のうちどれだけの割合の売上が、過去の世代が作っているのかを見る手法をLTV分析と呼びます。

LTVの計算方法

既に混乱されている方も多いと思いますし、何か専用のツールが必要なのではと思われている方も多いと思います。しかし、基本さえ押さえれば、マイクロソフトのエクセルとアクセスで分析可能ですので、ツールに高いお金を払う前に、先ずはLTV計算の手法をしっかり理解しましょう。


先ず計測する期間を決定します。3年ほどの営業実績がある場合は年度で、3年未満の場合は4半期でのパフォーマンスを計測するといいでしょう。次に該当期間内のユニークな初回購入者数を抽出します。システム上初回購入者が抽出できる場合は比較的簡単です。抽出できない場合は歴代の初回購入者を該当期間に絞込みアクセス等で抽出する必要があります。次に該当ユーザーが、次の期間(年もしくは四半期)にいくら購入したかを抽出します。そしてまた次の期間と抽出を続け、最も新しい期間になるまで作業を続けます。

例えば計測を2011年の第一四半期から開始する場合は、第一四半期のユニークな新規購入者が次の第二四半期、第三四半期と継続して購入金額を抽出し、最後本年度、2013年の第二四半期まで10四半期まで購入金額を抽出します。これが2011年第一四半期、別名第一世代の貢献売上金額となります。

2011/Q12011/Q22011/Q32011/Q42012/Q12012/Q22012/Q32012/Q42013/Q12013/Q2
1,000,000200,000150,000100,000100,000100,000100,000100,000100,000100,000

上記のような数字の抽出がされると思います。次に2011年の第2四半期のユニーク新規購入者数を抽出し同様の抽出を実施します。結果下記のような抽出が完了するとおもいます。これを第二世代と呼びます。


2011/Q22011/Q32011/Q42012/Q12012/Q22012/Q32012/Q42013/Q12013/Q2
1,200,000250,000170,000100,000100,000100,000100,000100,000100,000

上記のような数字の抽出がされると思います。
ここで2011年のQ2を見てみると、2011年Q2の第二世代の新規ユーザーの売上で120万円、その同じ期間に第一世代の売上が20万円です。従い、この2011年Q2現在の売上に占めるリピートユーザー率は
20÷120で、16%となります。

このように以後世代が新しくなればなるほど、過去の世代の売上比率が全体比率の中で大きな割合を占めてくることになります。これを最新の四半期まで計算し、年間の平均リピート率を計算します。

一旦リピート率が出れば、それを10年繰り返し、金利損などを含めたディスカウントレートを設定し、1ユーザーが将来10年に渡り生み出す利益を計算します。40年等、長期で計算する場合もありますが、そのような長期の変動は予測が非常に難しいため、ひとまずは10年で問題ないと思います。

その10年の利益と1新規ユーザー獲得のCPAコスト(コスト・パー・アクイジション)を比較し、現在の投資が将来利益をもたらすかを計算します。

リピート顧客で6割以上の売上を稼ぐことが出来れば貴社のビジネスは安定して永続的なものとなるでしょう。

ここで表される数字はあくまでも貴社の活動の結果です。この数字に何をすべきかは示されておりません。リピート顧客を増やすためには常に販売商品以上の価値を提供するという経営努力経営努力が必要とされます。


2013年6月16日日曜日

オンラインショッピングのリピートユーザー率の増やし方 - 連載第8回

貴社のビジネスの通信簿は、今まで説明してきた公式である「訪問者数」x「転換率」x「購買単価」に加えて、「リピート率」となり、これらの指標が今後の貴社の成長を予言します。

リピート率を増やす代表的な手段はフォローアップメールや、配送商品へのクーポン同封などです。順を追ってみていきましょう。

フォローアップメール
貴社のシステムでは自動的に注文確定メールを送付していると思います。しかし折角できた大切な顧客との接点です、もっと有効に利用しましょう。もし注文直後のシステムメールしか送っていないのであれば、それに付け加えて経営者の貴方署名入りの感謝のメールを送ってみるのもいいでしょう。二度目の購買にさらに感謝をしてもいいですし、何ヶ月も再購入をしていないユーザーに戻る時だと知らせるのもいいでしょう。何が正攻法かという定義はありません、是非貴方の想像力を発揮してください。フォーマルにふるのもいいでしょうし、軽く冗談めかして書くのもありでしょう。重要なのは必要なクラスターに分類してそれぞれのクラスターごとにメールを送っていくことです。こちらについては非常に重要ですのて後ほど説明いたします。


同梱ダイレクトメール
先の章で未だに重要なマーケティングツールはメールマガジンであると説明しましたが、いかにファンの多いメールマガジンでも開封率は20%に達しないのが市場平均です。ところが、開封率100%のダイレクトメールがあります。それが、配送商品に同梱する折り込みチラシ的なダイレクトメールです。週品カタログや、次回の購入を促すクーポン、店舗がまだ小さい場合など、場合によっては手書きのメッセージカードなどもありでしょう。

クーポン
バーゲン慣れしたユーザーにはクーポンは非常に強力なマーケティングツールとなります、システムが対応している場合はどんどんと活用しましょう。指数が対応していない場合もクーポンコードを注文の備考欄に書くと割引など、ある程度のオペレーションは出来るのではないでしょうか。別件になりますが、このショッピングカートにお客様が自由に書ける備考欄を実装していくことは、お客様とのコミュニケーションの起点となることも多く、多くの利点があります。受注処理を自動化しているからという理由だけで、この備考欄を実装していない会社が多いのには驚きです。同様に商品ページに商品に関するお問い合わせが簡単に送れる仕組みも忘れずに実装しましょう。実店舗と違い実際に確認できないため、お問い合わせ受ける受け口を広くオープンする事は非常に重要です。

リピートクラスター設計
リピートユーザーを管理向上させるためにはクラスターの管理が必要になります。リピートユーザーのクラスター管理とは何でしょうか?ユーザーには次の8パターンあると考えそれぞれのパターンをクラスターと呼びます。今後如何なるオファーをうつ時もそれぞれのクラスター毎にオファーを変えたり反応を計測していくことにより、よりロイヤルティの高いクラスターにユーザーを誘導しようという試みです。下記がそのクラスター群になります。

初回購入者
全てのユーザーは先ずはこのクラスターから始まります。初回購入から90日以内のユーザーをここに分類し在籍期間を0とします。在籍期間とは最初の購入日か最後の購入日までの間の日数を指します。

二回目購入者
初回購入後、90以内に二回目以上の購入をしたユーザーを指します。

継続購入者
90日が経つと下記のユーザーを除きこちらのクラスターに編入されます。

バーゲン購入者
バーゲン購入者とロイヤル購入者を設定するには先ず貴社の平均単価を知る必要があります。もし貴社の平均単価が5000円であるならそれの7から10倍の閾値を設定します。ここでは仮に40000円としましょう。90日経過後の通算消費額が40000円以上であればこちらのバーゲン購入者か下記のロイヤル購入者に分類されます。即ち平均単価の7倍を使うということは平均7回の購入をしてもらっており、それは上流の顧客であろうという仮説になります。ただ、一方で単価が5000円といっても50000円の商品を扱っているかもしれませんし、非常に安い商品をまとめ買いしたかもしれません。従いここにもう一つの閾値を設定します。ここで再度在籍期間の概念を利用します。再度、在籍期間とは最初の購入日か最後の購入日までの間の日数を指します。在籍期間が210日以内のユーザーはこのバーゲン購入者に分類します。総額40000円を使ってくれたとしても何故なら、広告に釣られて一回だけ高単価の商品を買ったバーゲンハンターの可能性が高いからです。

ロイヤル購入者
逆に40000円以上を使ってくれており、在籍期間が210日以上のユーザーはロイヤル購入者に分類され、全てのユーザークラスターがこのロイヤル購入者になるようにマーケティングしていくのが貴社のマーケティングチームの仕事になります。

通常はこの4つのクラスターで十分であって欲しいのですが、どうしても戻ってこないユーザーが出てきます。やはりそれらを別管理していく必要があります。ここではもう一つ新しい定義である離脱期間という定義を利用します。離脱期間とはユーザーが最後に貴社で購入をしてから経過した日数のことを指します。8ヶ月も貴社から離れていると再度戻ってきてもらうのは困難でしょうからここでは仮に240日を閾値に設定し、最後の購入から240日以上購入のないユーザーを離脱購入者と定義します。全ての離脱購入者を一つに管理してもいいのですが、折角上記の4クラスターを管理しているので、クラスター毎に離脱購入者を管理していくことにします。これにより離脱の多いクラスターを把握することができます。

初回離脱購入者
在籍期間が0日のまま離脱期間が240日以上になった購入者。いわゆる一回ポッキリのお客様です。

二回目離脱購入者
二回目の購入をしたものの最後の購入から240日以上次の購入がないお客様。

継続離脱購入者
二回目以上の購入をし、且つ在籍期間は90日以上あるものの、最後の購入から240日以上次の購入がないお客様。

バーゲン離脱購入者
在籍期間中の総購入金額が40000円以上あり、在籍期間が90日以上210日未満であり、一時期バーゲン購入者にカテゴライスされていたが、最後の購入から240日以上次の購入がないお客様。

ロイヤル離脱購入者
在籍期間中の総購入金額が40000円以上あり、在籍期間が210日以上であり、一時期ロイヤル購入者にカテゴライスされていたが、最後の購入から240日以上次の購入がないお客様。

さて、ここまでご理解頂けたら一度貴社のユーザーを上記のクラスターに分類してみましょう。それぞれのクラスターの在籍人数と総売上額を集計してみます。いかがでしょうか?出てきた数字は貴社の思い描いていたものと同じでしょうか?通常この段階で多くの企業経営者があまりの惨状に驚かれます。しかし、今までリピートユーザークラスター管理をしていなかった企業としては当然の結果です。落胆せずに「見える化」が図られたことをポジティブに捉えより上位のクラスターに顧客がシフトしていくよう継続して努力をしていきましょう。

通常の企業ですと、初回購入者が一番多く、人数的には9割程度あるのではないでしょうか。金額的にも過半数であると思われます。これでは如何に効率よく初回購入ユーザーをマーケティングしてもお金の無駄遣いで、貴社は永遠に利益を出せないでしよう。では努力のような対策を取っていけばいいでしょうか。

先ずは全てのマーケティングオファーはこのクラスター毎に投下され、計測されていかなければなりません。メールマガジン一つをとっても、クラスター毎の配送本数、開封率、クリック率、転換率、売上をトラックしていきます。

ひと度メールマガジンのパフォーマンスのトラッキングをクラスター毎に開始してみると驚く結果が出てくると思います。即ち、未購入者>初回購入者>>ロイヤル購入者の順で開封率やクリックスルー率の上昇がみられるはずです。それだけ上位クラスターのユーザーほど貴社とのエンゲージメントが強いといえます。このパフォーマンスの乖離も貴社の担当者のよりよいクラスターへ顧客を誘導したいといういい意味での刺激になるでしょう。

ひと度計測を始めるとそれぞれのベースに違うメールを送った方がいいのではないかという事に気づくと思います。初回購入ユーザーには次の購入に繋がるオファーを、二回購入ユーザーには何か新しい発見になるようなオファーを等、いろいろな想像力を発揮してみましょう。

究極の目的はロイヤル購入者の増加
これらの努力で忘れてはならないのが、究極の目的はロイヤル購入者を増やすことです。従い、毎月それぞれのクラスターからどれだけのユーザーが次のクラスターに移ったかが重要なKPIとなります。この指標をここでは遷移率と呼びます。重要なのは3つの遷移率で、初回購入ユーザーから二回目購入者への移動を遷移率1、二回目購入者から継続購入者への移動を遷移率2、継続購入者からロイヤル購入者への移動を遷移率3とし、できれば毎週、長くても月に一回はそれら全ての遷移率の推移の分析を行います。分析といってもこの数字は過去のアクションの結果ですから、さしたる驚きはないと思います。できるだけ短い周期で経過を観察し、必要なアクションを実行していきます。遷移率の推移を観察しているとそろぞれの遷移率がまだ安定せず毎月上下に激しく変動していることが観察して取れると思います。これはまだ貴社が顧客をうまくコントロールできていない証拠です。しっかりとリピートユーザー対策をして遷移率もコントロールできるようになりましょう。比較的コントロールしやすいのが、遷移率1の母数となる初回購入者数、と初回購入者から二回目購入者への遷移率1です。先に説明した入り口商品でしっかりと新規顧客を掴みます。その努力は同時に初回購入してから買い控えをしている顧客にも響くはずです。その他創意工夫で貴社の将来を支える新規顧客と、二回目購入を継続的に増やしていきます。難しいのは2回めから3回め、3回位目からロイヤル購入者への道です。

またこの顧客クラスター管理は各クラスターにステップアップするのにどれだけの確率で何ヶ月かければ到達するかということを予言できます。予言というと大げさですが、各クラスターの平均在籍期間と、全購入者数の中の割合を出してみて下さい。例えばロイヤル購入者になるには0.5%の確率で約7.5ヶ月かかるなど、各クラスターがどのように成長していくかを予想することができます。もちろん、ごの予想は現在の統計の上になりたっているので、貴社の努力次第で将来を変えることができるのは言うまでもありません。是非より短い期間で、より多くのロイヤル購入者ができるように努力して下さい。

何故顧客はリピートするのか?
ではここで何故顧客はリピートするのかという根本的な命題を考えてみましょう。貴方の実店舗での購買経験を振り返ってみるとよく分かります。例えば洋服を購入する場合はどうでしょうか?恐らく貴方の好きなショップは既に頭のなかに2,3店舗ありそのうちのどれに行こうか、もしくはそれら全てがある駅にいこうかと考えるのではないでしょうか。その店を気に入ったのはきっとなんとなく入って買った初回の商品が自分によく合っていた、店員が感じ良かった、店の雰囲気が良かったなどいろいろな要素があると思いますが、いずれのケースも要約すると自分が払った金額以上の満足感を感じたからリピートするようになったといえます。一方でオンラインショッピングではその実店舗での経験を提供するのが非常に難しいのが実情です。それ故に綺麗に取られた写真や、リッチコンテンツの商品ページが必要になるのです。そのような努力である程度のユーザーエクスペリエンスの向上に努められるのは事実です。しかしながら、実店舗での経験に比べると非常に単純で奥行きの浅い経験であることは否めません。そのような環境で購入したユーザーは何を求めるでしょうか?買った商品が”配達”されることを期待します。当然のことですが、逆にいうと購入した商品が届くことを期待し、箱を開けて自分がイメージした商品と同じものであることを期待します。従い、商品を受け取ったという事実だけでは、期待値の100%かそれ以下にしかなりえません。実店舗で経験できる決定的な何かが欠落しているのです。

この欠落をうまく補完して急成長したのが、最終的にアマゾンに買収されたアメリカのオンラインシューズストアのザッポスです。靴の返品送料無料、365日返品可能、広大なアメリカで顧客を驚かすために翌日に配達してみたりするなど。特に1週間はかかるだろうと読んで購入した靴が翌日に届くというサプライズはいかに顧客の満足度を上げるかという良い例です。ユーザーは商品を受け取るだけでは期待値の100%かもしくはそれ以下しか満たされません。それ以上のサプライズをどのように届けるかを考え抜いた企業のみが成長し生き残るのです。

2013年6月9日日曜日

オンラインショッピングの購入単価の増やし方 - 連載第7回

AOS(購入単価)の増やし方

本日は購入単価(Average Order Size、以下AOS)向上について考えてみます。売上の公式が訪問客数x転換率x購入単価である以上このAOSは高ければ高いほど売り上げが上がるのではと思われがちです。実際にはその通りともいえますが、一方で例えば家電店ではAOSが高くなり、食料品店ではAOSが安くなるのは当然といえるでしょう。また、家電のような単価の高い商品を扱うと当然転換率は低くなり、単価の安い商品の転換率は高くなりやすいです。また単価の高いブランド品よりも単価の安い自社ブランド品の方が利益は大きい事も多いでしょう。そのような商品毎の特性があることをご理解頂いた上でどのような取り組みができるか考えてみましょう。

お買い物を続ける
先ずは一つの商品を選んだユーザーに引き続きお買い物を続けて頂く導線を設けることが最初の取り組みとして有効です。これはもちろん貴社の利用するシステムに大きく依存しますが、最近のトレンドとしては商品一つの購入ボタンを押下しても直ぐにカート一覧ページには遷移せずにその商品に滞在したまま右上のカートアイコンに商品が入るというのが主流です。このような導線にすることによりユーザーは引き続き購入前のユーザーエクスペリエンスを引き継ぐことができ、その商品の閲覧前に閲覧していた商品にも簡単に戻ることができます。もし、システム的に、購入ボタンを押下すると、カート一覧ページに遷移する場合も、カート一覧ページに「元のページに戻りお買い物を続ける」ボタンを設置することが有効でしょう。

類似商品・レコメンデーション
これらのコンセプトは、一回の購入時に出来るだけ多くの商品を同じカートに入れてもらい、単価を引き上げようとするものです。同じく同時購買を促す施策として、商品ページや、カート一覧ページでの関連商品の表示が有効です。関連商品を表示する技術として、閲覧履歴や、サーチによる同一カテゴリーの他の商品の表示、レコメンデーション等があります。もし技術がない場合でも売れ筋商品を表示するだけでも効果があります。筆者の経験では8割から9割のは各技術間での差違はなく、最後の10パーセントがレコメンデーションが優れているといテスト結果がありました。従い、レコメンデーションなど高度な技術をどういれるか検討するよりも簡易に導入できる技術を早期に導入することで相当な効果が得られるといえますので、是非早期に導入を検討して下さい。また、レコメンデーションに関しても簡易なASPプロバイダーも多数あるので検討してみるといいでしょう。但しご注意いただきたいのが、それらのASPプロバイダーは販売コミッションを要求している事が多く、それは貴社の利益率に直接効いてきますので、費用対効果を慎重に判断する必要があります。

このようにAOSの計測にはAOS自体の計測も重要ですが、一体ユーザーは何商品を同じカートに入れているのかという、同一カート内の商品数も貴社の取り組みの成績簿となりますので、こちらも重要KPIとして設定、トラックしていきます。

さあ、これで訪問者数x転換率x購入単価という当座の売上が組みあがりました。いかがでしょうか貴社の取るべきアクションは明確にりましたでしょうか?

ここまでで売上の構成と必要なKPIは説明しましたが、実はこれだけではまだオンラインショッピングの必要なKPIの半分しか説明していません。今までの取り組みは全ていかに新規顧客を取って来るかにフォーカスしていました。しかし、貴社のビジネスを真に継続的なものにするにはいかに新規ユーザーをリピートさせるかが重要となってきます。次章ではリピートユーザーの確保について詳しく検討していきましょう。