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いくら苦労をしてアップデートしているKPIシートも共有されていないと意味はない、貴社では全従業員に情報アクセスを提供しているか

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2013年8月28日水曜日

オンラインショッピングのKPIまとめ - 連載最終回


各戦略・戦術の優先順位

オンラインショップも小売業ですから、小売業に王道はないようにオンラインショップの運営にも王道はありません。しかし、そこにいたる各要素の働きを理解しておけばにトライアンドエラーによる時間とお金の無駄遣いを未然に防ぐことが出来ます。中には全て指摘された通りにやったが結果が上がらないという方もいらっしゃるでしょう。むしろ多数かもしれません。そのような時は再度下記の順番でトライしてみて下さい。

1.先ずは入り口商品を作る

オンラインショップはまず商品づくりからです。逆にいうと入り口商品がないのにオンラインショップを初めてはいけません。必ずこれなら間違い無く消費者は買うだろうという商品を最低1つは作って下さい。

2.商品ページを最高に仕上げる

1で用意した入り口商品用に最高の商品ページを作ります。写真はプロが撮ったような出来である必要がありますし、複数枚のカットが必要です。ページ自体は使用しているイメージがわくように、使用シーンを想定した写真を多用します。それに必要なテキストもしっかりと記載します。

3.SEOはそつなくこなす

この最高のページに訪問客が来ないと始まりません。お金がないから人を呼べないよという前に最低限のSEO対策はしましょう。Googleの推奨している項目を実施するだけでも効果がでます。最低1つのキーワードは検索結果の1画面目に出てくるまで継続しましょう。

4.トラフィックを購入する

次にいよいよ作ったページにトラフィックを送ります。ドキドキする瞬間ですね。しっかりとキーワードを選び無駄なコストをかけないようテストをしながら進めます。200クリックあった時点で1つも購入がない場合は、キャンペーンそのものか商品の魅力に問題があるはずです。何が問題かつきとめ結果がでるまで頑張りましょう。

5.リピーターになるためのフォローアップ

入り口商品が売れ出したらリピータのフォローアップも同時に開始します。目先の売上が欲しくて新規購入者に目が行きがちですが、リピートしない店に未来はありませんのでビジネス開始当初からしっかりとフォローアップします。

6.品揃えを増やす

店のサイクルが回りだしたら次は品揃えを増やす時です。誰もが知っている型番商品から、オリジナル商品まで幅広く増強します。ポイントは型番商品は価格勝負が否めないので薄利で販売しますが、オリジナル商品でしっかりと利幅を取ることです。自社の商品の利益率をしらずに投資はできません。利益率からしっかりとCPAを計算し必要な商品戦略を立てて実行していきます。

7.離脱率対策をする

店に人が来だすとどこで彼らが離脱しているかもアナリティクスを通して確認することができます。業界スタンダードのシステムを導入しているとしても改善点は多数あります。しっかりと一つづつ対策を続けます。これは終わりのない戦いとなります。ABテストを実施し常に改善をしていきましょう。

8.トラフィックを増やす

ここまで来たらひと通りのサイクルは回っているはずです。貴社がどれだけ成長したいかに合わせて投資戦略を決めます。投資戦略に沿ってしっかりと結果をモニタリングしながらトラフィックを増やしていきます。決して、予算をつけたから使いまくろうなどとは思わないように。

9.購入者を増やす

更なる新規購入者を目指す時です。投資戦略の一部をCPAの安い戦略商品とメディアチャンネルに投資し、新規購入者を劇的に増やします。

10.リピーターを増やす

クラスター管理を導入し、それぞれの上位クラスターに移行するよう全てのコミュニケーション戦略を練り直し、ロイヤルカスタマーの数を増やします。


簡単に聞こえますが変数の管理とバランスが難しい取り組みになります。特に苦労するのがトラフィックを購入するところでしょう。特に品揃えの少ない時期は苦労します。従い必ず売れる入り口商品で顧客をつかみリピートさせることが重要ですので、先ずは入り口商品がGoogleから継続的に売れるよう全力を使います。その後試行錯誤をしながら有料トラフィックをふやしつつ、ユーザーをリピートとして定着させるよう頑張りましょう。



以上、オンラインショップで継続的に売上を上がるというのは非常に大変なことだとご理解いただけたのではないでしょうか。しかし、同じ努力をするにしてもオンラインショッピングの算数を理解し科学的に攻めるか、直感だけで攻めるかにより違った結果がもたらせれるというのはご理解いただけたのではないでしょうか。是非、本連載を参考に貴社の売上を向上させて下さい。

本連載では随所にKPIという言葉を使用していますが、なるべく読者の皆様が気負わないように自然な形で理解できるように構成してあります。とはいえ、各指標の管理にはそれなりのツールが必要です。是非KPI Masterを貴方の相棒にご選択いただければ幸いです。

2013年7月10日水曜日

オンラインショッピングのライフタイムバリュー(LTV) - 連載第9回

ライフタイムバリュー(Life Time Value: LTV)

オンラインショッピングを経営する皆様には既に重要な指標として知られているかと思いますが、リピート率を語る時同時に重要になるのが貴社顧客のライフタイムバリュー(Life Time Value: 以下LTV)です。この指標は実は貴社の売上規模以上に重要な指標と言うことができます。何故なら高いLTVを維持しているということは高いリピート率を維持しているということであり、高いリピート率を維持している限り、ユーザーが将来会社にもたらしてくれる利益水準までは新規顧客に投資をしても、その投資は将来会社に返ってくるといえるからです。

先ずは分かりやすい事例から説明します。
もし仮にある会社の1顧客の将来にわたり会社に貢献する利益の平均が3000円だとします。であれば新規顧客の獲得に2900円支払ったとしても100円の利益が出ることになります。従いこの会社は新規顧客獲得キャンペーンに2900円まで支払っていいことになります。この数字が分かっているのと分かっていないのとでは経営判断上大きな違いが出てきます。貴社が既に1年以上営業しているのであれば、今すぐLTVの計算をされることをお勧めします。

LTVのコンセプト

LTVの詳細な計算方法の説明にに入る前にLTVのコンセプトを理解する必要があります。大まかにいうと、各特定期間のユーザーの固まりを1世代と考え、その世代のユーザーが次の世代にどれくらい貢献しているのかを統計的に見るコンセプトのこと意味します。例えば2010年の総新規ユーザー数が50000人いたとするならば、その50000人が、2011年、2012年、2013年の売上にどれほど貢献するかを可視化します。この各年代の世代を毎年計算し、翌年以降にどれほど貢献しているかを各世代毎に計算していきます。1年を1世代とすると最低でも5年程度の営業年数がないと計測できないため、営業年数が少ない場合は4半期毎を1世代として計測を開始することを推奨します。このように全世代を計算した後、ある特定の年もしくは四半期の売上のうちどれだけの割合の売上が、過去の世代が作っているのかを見る手法をLTV分析と呼びます。

LTVの計算方法

既に混乱されている方も多いと思いますし、何か専用のツールが必要なのではと思われている方も多いと思います。しかし、基本さえ押さえれば、マイクロソフトのエクセルとアクセスで分析可能ですので、ツールに高いお金を払う前に、先ずはLTV計算の手法をしっかり理解しましょう。


先ず計測する期間を決定します。3年ほどの営業実績がある場合は年度で、3年未満の場合は4半期でのパフォーマンスを計測するといいでしょう。次に該当期間内のユニークな初回購入者数を抽出します。システム上初回購入者が抽出できる場合は比較的簡単です。抽出できない場合は歴代の初回購入者を該当期間に絞込みアクセス等で抽出する必要があります。次に該当ユーザーが、次の期間(年もしくは四半期)にいくら購入したかを抽出します。そしてまた次の期間と抽出を続け、最も新しい期間になるまで作業を続けます。

例えば計測を2011年の第一四半期から開始する場合は、第一四半期のユニークな新規購入者が次の第二四半期、第三四半期と継続して購入金額を抽出し、最後本年度、2013年の第二四半期まで10四半期まで購入金額を抽出します。これが2011年第一四半期、別名第一世代の貢献売上金額となります。

2011/Q12011/Q22011/Q32011/Q42012/Q12012/Q22012/Q32012/Q42013/Q12013/Q2
1,000,000200,000150,000100,000100,000100,000100,000100,000100,000100,000

上記のような数字の抽出がされると思います。次に2011年の第2四半期のユニーク新規購入者数を抽出し同様の抽出を実施します。結果下記のような抽出が完了するとおもいます。これを第二世代と呼びます。


2011/Q22011/Q32011/Q42012/Q12012/Q22012/Q32012/Q42013/Q12013/Q2
1,200,000250,000170,000100,000100,000100,000100,000100,000100,000

上記のような数字の抽出がされると思います。
ここで2011年のQ2を見てみると、2011年Q2の第二世代の新規ユーザーの売上で120万円、その同じ期間に第一世代の売上が20万円です。従い、この2011年Q2現在の売上に占めるリピートユーザー率は
20÷120で、16%となります。

このように以後世代が新しくなればなるほど、過去の世代の売上比率が全体比率の中で大きな割合を占めてくることになります。これを最新の四半期まで計算し、年間の平均リピート率を計算します。

一旦リピート率が出れば、それを10年繰り返し、金利損などを含めたディスカウントレートを設定し、1ユーザーが将来10年に渡り生み出す利益を計算します。40年等、長期で計算する場合もありますが、そのような長期の変動は予測が非常に難しいため、ひとまずは10年で問題ないと思います。

その10年の利益と1新規ユーザー獲得のCPAコスト(コスト・パー・アクイジション)を比較し、現在の投資が将来利益をもたらすかを計算します。

リピート顧客で6割以上の売上を稼ぐことが出来れば貴社のビジネスは安定して永続的なものとなるでしょう。

ここで表される数字はあくまでも貴社の活動の結果です。この数字に何をすべきかは示されておりません。リピート顧客を増やすためには常に販売商品以上の価値を提供するという経営努力経営努力が必要とされます。


2013年6月16日日曜日

オンラインショッピングのリピートユーザー率の増やし方 - 連載第8回

貴社のビジネスの通信簿は、今まで説明してきた公式である「訪問者数」x「転換率」x「購買単価」に加えて、「リピート率」となり、これらの指標が今後の貴社の成長を予言します。

リピート率を増やす代表的な手段はフォローアップメールや、配送商品へのクーポン同封などです。順を追ってみていきましょう。

フォローアップメール
貴社のシステムでは自動的に注文確定メールを送付していると思います。しかし折角できた大切な顧客との接点です、もっと有効に利用しましょう。もし注文直後のシステムメールしか送っていないのであれば、それに付け加えて経営者の貴方署名入りの感謝のメールを送ってみるのもいいでしょう。二度目の購買にさらに感謝をしてもいいですし、何ヶ月も再購入をしていないユーザーに戻る時だと知らせるのもいいでしょう。何が正攻法かという定義はありません、是非貴方の想像力を発揮してください。フォーマルにふるのもいいでしょうし、軽く冗談めかして書くのもありでしょう。重要なのは必要なクラスターに分類してそれぞれのクラスターごとにメールを送っていくことです。こちらについては非常に重要ですのて後ほど説明いたします。


同梱ダイレクトメール
先の章で未だに重要なマーケティングツールはメールマガジンであると説明しましたが、いかにファンの多いメールマガジンでも開封率は20%に達しないのが市場平均です。ところが、開封率100%のダイレクトメールがあります。それが、配送商品に同梱する折り込みチラシ的なダイレクトメールです。週品カタログや、次回の購入を促すクーポン、店舗がまだ小さい場合など、場合によっては手書きのメッセージカードなどもありでしょう。

クーポン
バーゲン慣れしたユーザーにはクーポンは非常に強力なマーケティングツールとなります、システムが対応している場合はどんどんと活用しましょう。指数が対応していない場合もクーポンコードを注文の備考欄に書くと割引など、ある程度のオペレーションは出来るのではないでしょうか。別件になりますが、このショッピングカートにお客様が自由に書ける備考欄を実装していくことは、お客様とのコミュニケーションの起点となることも多く、多くの利点があります。受注処理を自動化しているからという理由だけで、この備考欄を実装していない会社が多いのには驚きです。同様に商品ページに商品に関するお問い合わせが簡単に送れる仕組みも忘れずに実装しましょう。実店舗と違い実際に確認できないため、お問い合わせ受ける受け口を広くオープンする事は非常に重要です。

リピートクラスター設計
リピートユーザーを管理向上させるためにはクラスターの管理が必要になります。リピートユーザーのクラスター管理とは何でしょうか?ユーザーには次の8パターンあると考えそれぞれのパターンをクラスターと呼びます。今後如何なるオファーをうつ時もそれぞれのクラスター毎にオファーを変えたり反応を計測していくことにより、よりロイヤルティの高いクラスターにユーザーを誘導しようという試みです。下記がそのクラスター群になります。

初回購入者
全てのユーザーは先ずはこのクラスターから始まります。初回購入から90日以内のユーザーをここに分類し在籍期間を0とします。在籍期間とは最初の購入日か最後の購入日までの間の日数を指します。

二回目購入者
初回購入後、90以内に二回目以上の購入をしたユーザーを指します。

継続購入者
90日が経つと下記のユーザーを除きこちらのクラスターに編入されます。

バーゲン購入者
バーゲン購入者とロイヤル購入者を設定するには先ず貴社の平均単価を知る必要があります。もし貴社の平均単価が5000円であるならそれの7から10倍の閾値を設定します。ここでは仮に40000円としましょう。90日経過後の通算消費額が40000円以上であればこちらのバーゲン購入者か下記のロイヤル購入者に分類されます。即ち平均単価の7倍を使うということは平均7回の購入をしてもらっており、それは上流の顧客であろうという仮説になります。ただ、一方で単価が5000円といっても50000円の商品を扱っているかもしれませんし、非常に安い商品をまとめ買いしたかもしれません。従いここにもう一つの閾値を設定します。ここで再度在籍期間の概念を利用します。再度、在籍期間とは最初の購入日か最後の購入日までの間の日数を指します。在籍期間が210日以内のユーザーはこのバーゲン購入者に分類します。総額40000円を使ってくれたとしても何故なら、広告に釣られて一回だけ高単価の商品を買ったバーゲンハンターの可能性が高いからです。

ロイヤル購入者
逆に40000円以上を使ってくれており、在籍期間が210日以上のユーザーはロイヤル購入者に分類され、全てのユーザークラスターがこのロイヤル購入者になるようにマーケティングしていくのが貴社のマーケティングチームの仕事になります。

通常はこの4つのクラスターで十分であって欲しいのですが、どうしても戻ってこないユーザーが出てきます。やはりそれらを別管理していく必要があります。ここではもう一つ新しい定義である離脱期間という定義を利用します。離脱期間とはユーザーが最後に貴社で購入をしてから経過した日数のことを指します。8ヶ月も貴社から離れていると再度戻ってきてもらうのは困難でしょうからここでは仮に240日を閾値に設定し、最後の購入から240日以上購入のないユーザーを離脱購入者と定義します。全ての離脱購入者を一つに管理してもいいのですが、折角上記の4クラスターを管理しているので、クラスター毎に離脱購入者を管理していくことにします。これにより離脱の多いクラスターを把握することができます。

初回離脱購入者
在籍期間が0日のまま離脱期間が240日以上になった購入者。いわゆる一回ポッキリのお客様です。

二回目離脱購入者
二回目の購入をしたものの最後の購入から240日以上次の購入がないお客様。

継続離脱購入者
二回目以上の購入をし、且つ在籍期間は90日以上あるものの、最後の購入から240日以上次の購入がないお客様。

バーゲン離脱購入者
在籍期間中の総購入金額が40000円以上あり、在籍期間が90日以上210日未満であり、一時期バーゲン購入者にカテゴライスされていたが、最後の購入から240日以上次の購入がないお客様。

ロイヤル離脱購入者
在籍期間中の総購入金額が40000円以上あり、在籍期間が210日以上であり、一時期ロイヤル購入者にカテゴライスされていたが、最後の購入から240日以上次の購入がないお客様。

さて、ここまでご理解頂けたら一度貴社のユーザーを上記のクラスターに分類してみましょう。それぞれのクラスターの在籍人数と総売上額を集計してみます。いかがでしょうか?出てきた数字は貴社の思い描いていたものと同じでしょうか?通常この段階で多くの企業経営者があまりの惨状に驚かれます。しかし、今までリピートユーザークラスター管理をしていなかった企業としては当然の結果です。落胆せずに「見える化」が図られたことをポジティブに捉えより上位のクラスターに顧客がシフトしていくよう継続して努力をしていきましょう。

通常の企業ですと、初回購入者が一番多く、人数的には9割程度あるのではないでしょうか。金額的にも過半数であると思われます。これでは如何に効率よく初回購入ユーザーをマーケティングしてもお金の無駄遣いで、貴社は永遠に利益を出せないでしよう。では努力のような対策を取っていけばいいでしょうか。

先ずは全てのマーケティングオファーはこのクラスター毎に投下され、計測されていかなければなりません。メールマガジン一つをとっても、クラスター毎の配送本数、開封率、クリック率、転換率、売上をトラックしていきます。

ひと度メールマガジンのパフォーマンスのトラッキングをクラスター毎に開始してみると驚く結果が出てくると思います。即ち、未購入者>初回購入者>>ロイヤル購入者の順で開封率やクリックスルー率の上昇がみられるはずです。それだけ上位クラスターのユーザーほど貴社とのエンゲージメントが強いといえます。このパフォーマンスの乖離も貴社の担当者のよりよいクラスターへ顧客を誘導したいといういい意味での刺激になるでしょう。

ひと度計測を始めるとそれぞれのベースに違うメールを送った方がいいのではないかという事に気づくと思います。初回購入ユーザーには次の購入に繋がるオファーを、二回購入ユーザーには何か新しい発見になるようなオファーを等、いろいろな想像力を発揮してみましょう。

究極の目的はロイヤル購入者の増加
これらの努力で忘れてはならないのが、究極の目的はロイヤル購入者を増やすことです。従い、毎月それぞれのクラスターからどれだけのユーザーが次のクラスターに移ったかが重要なKPIとなります。この指標をここでは遷移率と呼びます。重要なのは3つの遷移率で、初回購入ユーザーから二回目購入者への移動を遷移率1、二回目購入者から継続購入者への移動を遷移率2、継続購入者からロイヤル購入者への移動を遷移率3とし、できれば毎週、長くても月に一回はそれら全ての遷移率の推移の分析を行います。分析といってもこの数字は過去のアクションの結果ですから、さしたる驚きはないと思います。できるだけ短い周期で経過を観察し、必要なアクションを実行していきます。遷移率の推移を観察しているとそろぞれの遷移率がまだ安定せず毎月上下に激しく変動していることが観察して取れると思います。これはまだ貴社が顧客をうまくコントロールできていない証拠です。しっかりとリピートユーザー対策をして遷移率もコントロールできるようになりましょう。比較的コントロールしやすいのが、遷移率1の母数となる初回購入者数、と初回購入者から二回目購入者への遷移率1です。先に説明した入り口商品でしっかりと新規顧客を掴みます。その努力は同時に初回購入してから買い控えをしている顧客にも響くはずです。その他創意工夫で貴社の将来を支える新規顧客と、二回目購入を継続的に増やしていきます。難しいのは2回めから3回め、3回位目からロイヤル購入者への道です。

またこの顧客クラスター管理は各クラスターにステップアップするのにどれだけの確率で何ヶ月かければ到達するかということを予言できます。予言というと大げさですが、各クラスターの平均在籍期間と、全購入者数の中の割合を出してみて下さい。例えばロイヤル購入者になるには0.5%の確率で約7.5ヶ月かかるなど、各クラスターがどのように成長していくかを予想することができます。もちろん、ごの予想は現在の統計の上になりたっているので、貴社の努力次第で将来を変えることができるのは言うまでもありません。是非より短い期間で、より多くのロイヤル購入者ができるように努力して下さい。

何故顧客はリピートするのか?
ではここで何故顧客はリピートするのかという根本的な命題を考えてみましょう。貴方の実店舗での購買経験を振り返ってみるとよく分かります。例えば洋服を購入する場合はどうでしょうか?恐らく貴方の好きなショップは既に頭のなかに2,3店舗ありそのうちのどれに行こうか、もしくはそれら全てがある駅にいこうかと考えるのではないでしょうか。その店を気に入ったのはきっとなんとなく入って買った初回の商品が自分によく合っていた、店員が感じ良かった、店の雰囲気が良かったなどいろいろな要素があると思いますが、いずれのケースも要約すると自分が払った金額以上の満足感を感じたからリピートするようになったといえます。一方でオンラインショッピングではその実店舗での経験を提供するのが非常に難しいのが実情です。それ故に綺麗に取られた写真や、リッチコンテンツの商品ページが必要になるのです。そのような努力である程度のユーザーエクスペリエンスの向上に努められるのは事実です。しかしながら、実店舗での経験に比べると非常に単純で奥行きの浅い経験であることは否めません。そのような環境で購入したユーザーは何を求めるでしょうか?買った商品が”配達”されることを期待します。当然のことですが、逆にいうと購入した商品が届くことを期待し、箱を開けて自分がイメージした商品と同じものであることを期待します。従い、商品を受け取ったという事実だけでは、期待値の100%かそれ以下にしかなりえません。実店舗で経験できる決定的な何かが欠落しているのです。

この欠落をうまく補完して急成長したのが、最終的にアマゾンに買収されたアメリカのオンラインシューズストアのザッポスです。靴の返品送料無料、365日返品可能、広大なアメリカで顧客を驚かすために翌日に配達してみたりするなど。特に1週間はかかるだろうと読んで購入した靴が翌日に届くというサプライズはいかに顧客の満足度を上げるかという良い例です。ユーザーは商品を受け取るだけでは期待値の100%かもしくはそれ以下しか満たされません。それ以上のサプライズをどのように届けるかを考え抜いた企業のみが成長し生き残るのです。

2013年6月9日日曜日

オンラインショッピングの購入単価の増やし方 - 連載第7回

AOS(購入単価)の増やし方

本日は購入単価(Average Order Size、以下AOS)向上について考えてみます。売上の公式が訪問客数x転換率x購入単価である以上このAOSは高ければ高いほど売り上げが上がるのではと思われがちです。実際にはその通りともいえますが、一方で例えば家電店ではAOSが高くなり、食料品店ではAOSが安くなるのは当然といえるでしょう。また、家電のような単価の高い商品を扱うと当然転換率は低くなり、単価の安い商品の転換率は高くなりやすいです。また単価の高いブランド品よりも単価の安い自社ブランド品の方が利益は大きい事も多いでしょう。そのような商品毎の特性があることをご理解頂いた上でどのような取り組みができるか考えてみましょう。

お買い物を続ける
先ずは一つの商品を選んだユーザーに引き続きお買い物を続けて頂く導線を設けることが最初の取り組みとして有効です。これはもちろん貴社の利用するシステムに大きく依存しますが、最近のトレンドとしては商品一つの購入ボタンを押下しても直ぐにカート一覧ページには遷移せずにその商品に滞在したまま右上のカートアイコンに商品が入るというのが主流です。このような導線にすることによりユーザーは引き続き購入前のユーザーエクスペリエンスを引き継ぐことができ、その商品の閲覧前に閲覧していた商品にも簡単に戻ることができます。もし、システム的に、購入ボタンを押下すると、カート一覧ページに遷移する場合も、カート一覧ページに「元のページに戻りお買い物を続ける」ボタンを設置することが有効でしょう。

類似商品・レコメンデーション
これらのコンセプトは、一回の購入時に出来るだけ多くの商品を同じカートに入れてもらい、単価を引き上げようとするものです。同じく同時購買を促す施策として、商品ページや、カート一覧ページでの関連商品の表示が有効です。関連商品を表示する技術として、閲覧履歴や、サーチによる同一カテゴリーの他の商品の表示、レコメンデーション等があります。もし技術がない場合でも売れ筋商品を表示するだけでも効果があります。筆者の経験では8割から9割のは各技術間での差違はなく、最後の10パーセントがレコメンデーションが優れているといテスト結果がありました。従い、レコメンデーションなど高度な技術をどういれるか検討するよりも簡易に導入できる技術を早期に導入することで相当な効果が得られるといえますので、是非早期に導入を検討して下さい。また、レコメンデーションに関しても簡易なASPプロバイダーも多数あるので検討してみるといいでしょう。但しご注意いただきたいのが、それらのASPプロバイダーは販売コミッションを要求している事が多く、それは貴社の利益率に直接効いてきますので、費用対効果を慎重に判断する必要があります。

このようにAOSの計測にはAOS自体の計測も重要ですが、一体ユーザーは何商品を同じカートに入れているのかという、同一カート内の商品数も貴社の取り組みの成績簿となりますので、こちらも重要KPIとして設定、トラックしていきます。

さあ、これで訪問者数x転換率x購入単価という当座の売上が組みあがりました。いかがでしょうか貴社の取るべきアクションは明確にりましたでしょうか?

ここまでで売上の構成と必要なKPIは説明しましたが、実はこれだけではまだオンラインショッピングの必要なKPIの半分しか説明していません。今までの取り組みは全ていかに新規顧客を取って来るかにフォーカスしていました。しかし、貴社のビジネスを真に継続的なものにするにはいかに新規ユーザーをリピートさせるかが重要となってきます。次章ではリピートユーザーの確保について詳しく検討していきましょう。

2013年5月13日月曜日

オンラインショッピングの商品と商品ページの秘訣 - 連載第6回


商品ページでの転換率アップの施策

商品ページは実際の店舗で考えると接客にあたります。折角お金をかけて呼び込んだユーザーも接客がまずくて逃していてはそのうち店を畳まなくてはならなくなります。それほどに商品ページでの接客は重要な改善ポイントとなります。商品ページの改善の多くが直接CVRの改善に寄与しますので本腰を入れて取り組みましょう。全体のコンセプトとしては情報量の多いリッチコンテンツのページを作成し、ユーザーに商品使用のイメージを訴えることがポイントとなります。

先ず大事なのは当然ですが商品写真です。当たり前ですが薄暗くて商品の見栄えがしない写真などは致命的です。致命的と分かっていても写真を撮る技術がなく仕方なく使っている方も多いようですが、写真は簡単なコツを掴むことで驚くほど簡単に改善しますので是非専門書やサイト、必要であればセミナーに通い写真の腕をあげてください。一般的には商品撮影用の簡易スタジオ的なものを事務所に作り、いつも同じ環境で安定して写真を撮ることを推奨します。簡易スタジオといっても通販などで簡単に手に入る撮影キットと三脚で十分用を足します。また、撮影した写真はアドビ社のフォトショップなどで加工をすることでプロフェッショナルな仕上がりにすることが可能です。この辺りを下請けする企業も多数あるので貴社の戦略に従い内製するかアウトソースするかを決定します。

写真が出来れば次はコンテンツです。先ず検索対策として該当商品の売りであるキーワードを必ず商品名と商品説明文に入れることが重要です。また意思決定に必要なスペック等も漏らさず記載します。ここまでやってようやく並の下程度の商品ページとなります。

これ以上を目指すには貴社の取り扱う商品によって変わってきます。もし貴社が家電などの型番を売っているのであればより重要なのは型番そのものと価格、その価格が価格比較サイト等比較しやすいサイトに載っていることが最重要課題となります。また、その商品に関するレビューや口コミも購入を後押しする要素ですのでユーザーに協力を仰ぎ出来る限りのコメントを記載してもらうようにします。レビューを書いてくれたらプレゼント進呈などという手段も有効でしょう。
一方でオリジナル商品、グルメやファッションなどを扱っている場合はより充実したコンテンツが必要となってきます。オリジナル商品の場合は商品の各ディテール写真も必要でしょうし、その商品の使用シーンを彷彿させるいえメージ写真も必要でしょう。ファッションであれば該当年齢のモデルが着た写真や、他商品とのコーディネート、使用シーンのイメージ写真などが重要となります。これらを盛り込んでいくと必然的に各商品ページがリッチコンテンツ化していき、結果的に前述のSEO効果もでてきます。一朝一夕には達成出来ませんのでしっかりと腰を入れて取り組みます。

いずれのケースでも商品説明文にはしっかりと、貴社製品の売りを明記する必要があります。すなわち、この商品を買うことでどのような利点があるのか、この商品は競合と比べてどう有利なのか、メディアに取り上げられた等の実績、事実はあるのか、ない場合使用したユーザーの声はどのようなものか。商品ページ一つをとってもこのようにバラエティに飛んだ取組課題があります。しっかりと戦略と優先順位を立てて取り組みましょう。


商品そのものでの転換率アップ

最後に商品そのものが魅力的か、また魅力的な価格かという問題が残ります。転換率のコーナーの最後に書きましたが実は全ての転換率の取り組みの中で最も重要な項目といっても過言ではありません。考えてみて下さい、もしその商品が世界中であなたの店でしか売っていなかったらどんなにユーザーエクスペリエンスが劣悪でも、どのように不親切なページであってもユーザーが知ってさえすれば必ず貴社のサイトで購入するでしょう。実店舗の商売でも、「商売は仕入れだ」とよく言われますが、オンラインショッピングでもまさしくその通りで、いかに競争力のある商品を競争力のある価格で仕入れてくるかが勝負となります。

そんなの分かっているけどうちの規模ではいいものをいい値段で仕入れるのは難しいんですよ、という声もよく聞きます。ではそのような店はどのようにしたらいいのでしょうか?いつも大手に負けてばかりなのでしょうか?ざっとオンラインショッピングを探してみても実はそうではないことに直ぐに気づくかと思います。地方の小さな店でも日本中、世界中に商売をしていらっしゃる店舗はたくさんいらっしゃいます。彼らが分かっていて実施して、一般に実施していないこととは何でしょうか?

実店舗の商売の慣用句に「商売、損して元取れ」というのを聞いたことはあるでしょうか。結局は、オンラインであってもオフラインであっても商売の原理は一緒で、投資をしてユーザーを獲得しそのユーザーにリピーターになってもらうことが勝利の方程式です。飲食店であれば常連さんにはどんどんとサービスをして、その常連さんが他のお客さんを連れてくるという連鎖を作るのではないでしょうか。オンラインショッピングであっても図式は同じです。

最も大事な戦略は「入り口商品」と言われる、初回ユーザーを捕まえるいわゆるキラー(Killer)商品です。もし貴社が卸直販煎餅を売っているとしたら、大口だから安いというのはもちろん売りですが、それでは食べたこともないユーザーは購入に躊躇してしまいます。従い、初回購入ユーザー用に送料込みで1000円程度のお試しセットを用意します。一般消費者の立場にたって考えてみて下さい。1000円、しかも送料込みであれば少々失敗しても痛手はないですし、むしろその辺のデパートで買うより安いですのでひとつ買ってみようかということになるのではないでしょうか。

または、日々必要な日用品でユーザーがその商品の価格帯を理解している商品なども取り組みやすいです。例えばシャンプー、洗剤、水、油、季節によっては蚊取り線香や虫よけ、日焼け止めなども大体の相場が分かっているのではないでしょうか。そのような商品で貴社にマッチするものを選び、送料込みで市場価格よりも安くして売り出します。当たり外れはあるものの幾つかは当たり、時にびっくりするような数量の注文が入ってくることでしょう。

「いやいや、話は分かるがそれでは損をしっぱなしだよ」というご意見も分かります。しかし商売損して元取れです。この新規ユーザーをいかに次の購入に繋げるかが貴社のビジネスの分かれ道になります。いくらユーザーを呼んできても購入しなければ意味がありません。Visitorとしてカウントされる訪問ユーザーとPurchaserとしてカウントされる購買者のランクの違いは天と地ほどの違いです。もし貴社の転換率が1%であれば、100人の訪問者のうちたった1人が購買者なのです。従い商売開始時の最初の目的はいかに購買者を増やすかということです。

オンラインショッピングの算数
本連載の趣旨は「オンラインショッピングの算数」ですので、これら一連の入り口商品に対する取り組みを数学的に検証してみましょう。

貴社が仮に日用美容ショップだとし、シャンプーセットを880円送料無料で売りに出したとします。通常このシャンプーセットは980円から1100円の間で売られているとします。この商品の存在をユーザーがメルマガなどで知った場合どのような反応をするでしょう?「あ、安い!え!?しかも送料無料!?」「今のシャンプーはちょっと残っているけどどうせまたなくなるし買っちゃおう♪」と、なるのではないでしょうか?

当然市販980円のシャンプーも薄利多売で1セット売っても100円も儲からないと思われます。仮に仕入れ値を880円とします。送料はいくら業者とかけあっても300円程度になるのではないでしょうか?

数式
売値880円ー仕入原価880円ー送料300円=利益▲300円

「300円の損じゃないか!」
おっしゃるとおりです。しかしもしこのユーザーを貴社のメルマガだけで獲得したとしたら、メディアコストは0円、よってこのユーザーの獲得コストは300円ということになります。この300円が高いか安いかは貴社のユーザーのライフタイムバリュー(LTV)の総額によります。LTVについては他の日にでじっくりとご説明しますが、簡単に言うと1ユーザーが生涯貴社のサイトでいくらを使ってくれるか、その際の貴社の利益はいくらかという数字になります。もしこのLTVが300円以上であればもちろんこの取組は続けるべきですし、LTVが300円もないというのであれば、そもそもの集客方法も含め根本的な戦略の見直しが必要といえます。

ご理解いただけましたでしょうか、オンラインショッピングで重要なのはCPAと呼ばれるCost per acquisition、1新規購入者の獲得コストであり、それは貴社の商品構成とその利益率、1ユーザーの貴社への利益貢献率により変動してきます。重要なのはその必勝のセオリーを理解し、しっかりと投資をコントロールすること。また、先にお金を使わないとユーザーは来ないということを理解する一方、一度来てもらったユーザーにいかにリピートしてもらうかということが最重要な取り組みとなります。

以上、転換率を上げるために貴社の戦略的な商品選定、特に「入り口商品」の設定と、その科学的、数学的分析とコントロールが重要です。この取り組みはその他の取り組みと共に継続的に実施していく必要があります。

2013年4月2日火曜日

オンラインショッピングの転換率(コンバージョン率) - 連載第5回


次に転換率(Conversion rate)について考えてみます。商売は先ず人がいるところでする必要があり、人がいない場合は人を呼んでくる必要があります。従い、先の章のいかに人を呼んでくるかが非常に重要です。一方で人を呼んできても購入してもらえなければ貴社に落ちるお金はゼロ円になります。呼んできた人のうち何人が購入に至ったかの指標となるのが転換率(以下CVR - Conversion Rate)です。CVRを上げるには複合的かつ高度な取り組みが必要になります。複数の一般的な取り組みはありますが近道はないことだけは理解して地道に努力をしていきましょう。

1.サイトの離脱箇所
CVR改善には貴社のサイトのどこでユーザーが離脱しているかを知る必要があります。ユーザーの動向を知るためにはGoogle Analyticsに代表されるサイト分析ツールを導入する必要があります。まだ導入されていない場合は分析ツールの導入から始めましょう。貴社の対応システムがGoogle Analyticsなどのサードパーティツールを導入可能な場合は貴社のITチームに導入してもらいます。サードパーティツールを使えない場合は、システム自体に組み込まれていないか確認します。貴社のビジネスにとってこのサイト分析ツールは命綱といえますので何らかの理由でサイト分析ツールを導入できない場合はシステムの乗り換えも真剣に検討しましょう。サイト分析ツールにはGoogle Analyticsの他、アドビ社が提供するSiteCatalystもあります。SiteCatalystは貴社にあった柔軟な設定が可能ですが導入とメンテナンスが少々難しくなっています。一方、Google Analyticsは簡単に導入できるものの深くカスタマイズされた分析には不向きといえます。どちらが貴社に向いているかじっくり検証して導入します。

一旦導入した場合、監視すべきKPIはサイト全体の離脱率、トップページの離脱率、カテゴリーページ、サーチページ、キャンペーンページなどそれぞれのサイトセクション毎の離脱率となります。それぞれ注力箇所を選び日々のトラッキングを開始しましょう。

その中でもトップページは貴社のブランディングの成果を見るページでもありますので最重要ページとして監視します。特にこのページに関しては常に改善を入れられるように心がけます。Aパターン、Bパターンで結果の違いを確認できるABテストツールも広く出回っていますので、必要に応じて導入します。こちらもアドビ社のTest&Targetが有名なソフトウェアとなります。もちろんそのような有償ツールを使わなくとも露出率50%でバナーのクリック率の比較をするなどいくつかの方法がありますので是非トライして下さい。

トップページの離脱率対策として有効なのは、閲覧履歴や、商品ブックマーク、カート内商品の表示、レコメンデーションなどユーザーの主体的アクティビティの結果選ばれた商品を分かりやすいところに表示することです。閲覧履歴だけでも10%以上は離脱率が下がると思われます。重要なのはユーザーの行動意志に関連した商品を表示することで、高度なテクノロジーを使わなくとも適切に表示出来れば離脱率の改善に大きく貢献します。

次に目をつけるべき箇所は貴社のサイト内でトラフィックの多いサイトセクションになります。通常はサーチ結果かカテゴリーページになります。こちらもトップページと同じ要領でユーザーの行動意思に関連した商品を表示することはもちろんですが、売れ筋等のランキングコンテンツや、トレンド商品の表示など手作業での充実したコンテンツの表示も効果的です。このようにセクションごとの離脱率を削減していく地道な努力が最終的にはサイト全体としてのCVRの向上につながりますので、分析と改善を継続してきましょう。

2.カート改善
次に重要なのはショッピングカートとお買い物ステップそのものの検証です。今ではオンラインショッピングは汎用的なものとなり、どのサイトも似たようなお買い物ステップを実装しています。しかし似たようなお買い物ステップだからといって必ずしも最適とは限りません。特にこのショッピングカートでは買う意志のあるユーザーが到達してきているわけですから、少しの改善で劇的な効果をもたらすことがあります。皆さんもアマゾンがワンクリックで購入できるようにしているのをご存知かと思います。もちろんユーザーの利便性を上げることが目的ではありますが、彼らもカートでの離脱率を極限まで下げるにはどうしたらいいかといろいろ検証した結果、ワンクリック購入にいきついたはずです。ワンクリック購入はまだアマゾンの特許であるのと、よほどユーザーから信頼がないと決済を含めたデフォルトのお買い物方法を保存することに抵抗があると考えられるため、先ずは通常のお買い物ステップが最適な流れになっているかを確認します。

- 確認ポイント1
先ず確認すべきは貴社のサイトが会員制になっているかどうかという点です。会員制すなわち、購入にあたりユーザー登録が必要かどうかです。当然のことですが、ユーザーの心理的プレッシャーという視点から考えるとわざわざ会員登録しなくても購入出来る方が、ストレスが少ないですし利便的でもあります。では会員登録をなくそう、と短絡的に考えることはできません。これは貴社のビジネスモデルがどのような視点になって構築されているかにも左右されます。通常のオンラインショップであるならば、ユーザーを会員化して次の購入につながるオファーを送りたいと思うでしょうし、会員特別キャンペーンなども考えられているでしょう。従い、この会員にするかどうかという議論は既に出尽くされた感があり、会員化する方向で運営者側が動いているのが流れです。

また、ユーザーからみてもすでにお買い物用メールアドレスを持たれている例も多く会員登録することにさほど抵抗を感じていないようです。ただ参考までにアメリカもオンライントラベルサイトであるエクスペディアは(expedia.com)、発足当初から会員登録は不要で、世界中のほとんどのサイトが会員化にこだわっている現在も、会員登録は旅行予約のあとユーザーが望めばという形をとっています。そこにはいいトラベルの在庫をもっており、いいユーザーエクスペリエンスがあればユーザーが戻ってくるという彼らの確固たる意志を感じます。

一旦会員化すると決めた場合の検討箇所は、1.会員にならなくてもお買い物ステップに入れてお買い物を終了できるかと、2.お買い物後会員になるかを選択できるかという点でしょう。1は貴社のポリシーの問題ですので、ポリシーに沿って決めて頂き、会員にならなくても買えるようにする場合は、ゲスト購入できることをお買い物ステップの最初に明確にうたいます。2はお買い物内容確定時、もしくは確定後に会員になるかどうかをチェックボックスにて選択させます。確定後の場合は全くお買い物のCVRに影響を与えない反面、会員になる人数は確定前に選択させることに比べて劇的に減るでしょう。こちらも貴社のポリシーの問題となりますのでよく話し合って決めて下さい。

この会員登録の箇所を除くとショッピングカートのCVRに対する確認場所は限られてきます。1つめは住所入力と送料確定画面です。全品送料無料や全国一律いくら等の均一料金設定がなされていない場合は商品の組み合わせと配送地域により送料が変動します。変動送料制をとっている場合、どこで送料を確定させるかがひとつの検討課題となります。一般的には、送料の確認は商品ページやショッピングカートで可能で、最終送料が確定されるのは送付先を確定した時となります。

従い、商品確定>住所確定>送料確定というフローを通ることとなります。通常は、住所入力負担の軽減、不要な情報は入力させない、送料は安いものから並べる等の工夫による地道な改善が必要となります。

- 確認ポイント2
2つ目の確認ポイントは決済方法となります。現在各国共に主流はクレジットカード決済となっていますが、もちろん銀行振り込み、デビットカード、コンビニ支払いや代金引換え等のオルタナティブペイメントも重要な位置づけを占めています。また、PayPalなどの決済プラットフォームも重要なプレーヤーとなります。ここで留意すべき点は、ユーザーは多彩でありユーザー一人一人使いたい決済手段は違うということです。この観点からいくと、この決済ステップではいかに多くの決済手段を用意するかという点が最初のCVRの改善ポイントとなります。市場的にはクレジットカードと銀行振込、国によっては代金引換えなどの主要2から3決済手段で十分という統計がでているでしょう。しかしユーザーは多彩ですので、数パーセントでも需要があるのであればその決済手段は導入すべきです。現在は一社に繋げばほとんどのオルタナティブペイメントにつながるという決済ゲートウェイ業者も多数でてきていますので検討する価値はあるでしょう。また日本では今ひとつ人気のないPayPalですが、国によっては大きなシェアを占めていますので、検討してみる価値はあります。もちろんその際PayPalにユーザー情報や、購入情報などが渡リますので、貴社の成長戦略の中でPayPalのような決済業者は、競合となるのかパートナーとなるのかを見極めて導入します。

日本ではまだ使えませんが、Google checkout、Checkout by Amazon等もPayPalと同様に捉えることができます。これらの新決済手段の最大の魅力はクレジットカードを保存していることです。ユーザーの心理状況としてはなるべく自分のクレジットカードの保管業者は制限したいと思っています。従い、いくら貴社がライセンスを取り(VISA/MasterCardの要請によりクレジットカード番号の取得、保存にはPCIライセンスの保有が必要)カードを安全に保存するといってもなかなかユーザーは信用しません。それならばPayPalなどの既にカード番号保有が既にデフォルトとなっているサービスと連携するというのも十分考えられる選択肢だといえます。逆に、そのような市場環境にもかかわらず貴社を信用してカード番号を保存してくれるユーザーは非常に優良顧客である可能性が高いですので、マーケティングの素材として大いに利用する価値はあるでしょう。

またクレジットカードに関しては分割払いの実装も非常に重要な要素となります。世界中、特に新興国では大多数のユーザーがカードを分割払いで支払っています。貴社の決済ステップも分割払いが明確に選択できるよう設定しておきます。その際金利手数料の変動がある場合も明瞭に表記する必要があります。

以上、送料計算ステップ、決済ステップの見直しが完了したら最後にもう一度カート全体の流れを確認します。ボタンの色や配置など細心の注意を払って前ステップの統一性を確認します。最後に難易度は高くなりますが送付先や決済方法などをデフォルト登録できるようにして、次回のお買い物から最小ステップで通過できるような仕組みを導入することを推奨します。

一方で、折角全お買い物ステップを無事に通っても、銀行振込み等後払いの決済方法については別途後払い対策が必要となります。考えられる対策を施す必要があります。代表的なものからいいますと、1.お買い物完了画面での「まだ注文は完了していません、今直ぐお支払いを」などという警告メッセージ、注文完了メールでの警告、更には在庫保持期間終了前日の支払い催促メール等です。また貴社のコールセンターからの直接の電話も効果的です。折角売ったものを逃すというのは、そのステップに行くまでに投下したマーケティング費用等を考えると非常に痛手となりますので、最後の一手を緩めないように、お客様に迷惑を与えない程度に厳格な対策が必要となります。

最後になりますが購入完了後、再度「お買い物を続ける」等と称して次の購入へ誘導するというな施策も単純ですが再購入を促す効果がありますので徹底して対策しましょう。

次回は商品ページと商品について記載します。

2013年3月17日日曜日

オンラインショッピングのメールマガジンKPI - 連載第4回


前回の続きのオンラインショッピングの無料トラフィックについて考えてみます。今回はその中でも最も重要なメールマガジンについて詳細を検討してみましょう。


4.内部メルマガ
なんだメルマガか、と見過ごされがちなマーケティングチャンネルですが、こちらは未だに非常に重要なチャンネルです。先に外部メルマガを説明しましたが、当然外部メルマガは有料トラフィックであり、配信数毎、クリック毎、販売毎に等、業者により違いますが何らかの対価を貴社は業者に支払うことになります。しかし、一方でこの内部メルマガは配信毎に課金をされない、いわば唯一自分でコントロールできる魔法のようなマーケティングツールとなります。(もちろん配信用に外部サービスを使っていれば、配信毎に課金をされることになりますが、外部メルマガに比べると比較にならない程安価な投資となります)従い、先ずやらないといけないのはメルマガ会員の獲得です。貴社のサイト随所にメルマガ申し込み画面を付けるのはもちろん、メルマガ申し込み専用画面も作りこみましょう。そこには過去のメルマガのサンプルなどを併設して置いておくと効果的です。Cookieを操作して、初回ビジターには必ずメルマガ登録のライトボックスをポップアップさせるのも有効です。また、Javascriptを駆使して、ブラウザーの一番下に動的にフロートして表示されるライトボックスも最近は人気です。もし、貴社システムでクーポンを作成できるのであれば、登録に対してクーポンを発行してもいいでしょう。発行金額は先に説明したCPOや顧客の生涯価値などで決定しますが、顧客にとっても十分魅力的な金額である必要があります。
メールマーケティングは既に10年以上の実績があり、他のメディアが成長してきている中で、現在でもダントツの効率的なメディアとして君臨しています。貴社の数少ない顧客との接点として、会社のマーケティング方針と合致したコンテンツを購読者に届けるようにしましょう。このメールマーケティングの唯一の欠点は、効果的なだけに多くの業者がメールマーケティングを実施しており、非常に多くのメールがインターネット上を行き来しています。それに伴い、メールオペレーターや、インターネットサービス・プロバイダーにスパム判定をされることも多くなって来ています。一度スパム判定されるとユーザーの受信箱に届けるのは至難の業となります。従い、ここは必要投資と考えメール配信率アップのコンサルティングを頼む等、しっかりと配信されるよう投資をしていく必要があります。届かないメールは送っていないのと同じであることを忘れないようにしましょう。

メールマガジンは非常に重要なマーケティングツールだということをご理解頂いたので、ここでは、メールマガジンのKPIについて考えてみます。後ほど顧客クラスターの重要性については別途説明しますが、ここではメールマガジンそのものの管理に必要なKPIについて説明します。メールマガジンのパフォーマンスは下記の公式によりトラック可能です。

「メールマガジン経由の売上」=「配信数」x「配達率」x「開封率」x「クリックスルー率」x「転換率」x「単価」

このように書くと非常に難解ですが、それぞれはさほど難しくありません。順番にみていきます。


配信数
先ずは如何に大きなユーザーベースを持っているかが勝負になります。ビジネスを始めたばかりの時期は如何にユーザーのメールアドレスを獲得するかに注力しましょう。先ずは貴社が何者かを分かってもらわないといけないため、ブログやツイッター、フェイスブックなどを活用し情報を発信します。次に貴社のサイトの特設ページでいかに貴社のメールマガジンが楽しくユーザーにベネフィットがあるかを訴求します。トップページはもちろんあらゆる箇所にメルマガ登録ボックスを設置します。また、cookieを管理できる技術力があるなら、cookieのない新規ユーザーにはメルマガ登録のライトボックスを強制表示し入会を促すのも効果的です。その際、更にクーポンを追加すると効果は上がります。この獲得したベースを毎日既存ベースに追加していきます。実はこの配信数は次の配達率に非常に関係してきます。やみくもに質の悪いメールアドレスを増やすとスパム業者として扱われ取り返しがつかなくなりますので配達率をモニターしながら推進します。


配達率
持っているメールアドレス全てにメールを配達することは通常出来ません。このように書くと、自分のメールが届かなかったことなどほとんど無いよとおっしゃる方も多いと思います。しかしながら、貴社がサードパーティのメール配信業者を利用している場合はさほど気にする必要はありませんが、自社で送信する場合は毎日1万通を超えたあたりから注意が必要です。貴社のビジネス規模が拡大するにつれて大量のメールを送るようになると思いますが、大量のメールを送る企業をインターネット・プロバイダーやGmail、Hotmailなどのメールサービスプロバイダーは嫌います。嫌うというと語弊がありますが、大量に送れば当然受け取りたくない人々の数が増えます。数が増えると当然プロバイダーは注意して観察を始め、ある一定の閾値を超えると、そのそも貴社からのメールを受け取らないか、受け取ってもユーザーのスパムボックス(ゴミ箱)に届けるということを始めます。特にユーザーはプライベートで使うサービスに会社のメールアドレスは使わずに、GmailやHotmailなどを使う傾向があります。そういうユーザーが多い、Gmail、Hotmailも扱いに慣れており、いとも簡単にスパムトラップに引っかかってしまうでしょう。先述のようにメール配信率改善コンサルに頼むのもありですし、またしっかりとセグメントをして配信していくことで、ユーザーとの関連性があがり開封率の向上も期待出来ます。いずれにせよ本件は会社の成長と共に必ず直面しないといけない問題ですので、地道に取り組みましょう。


開封率
届けることができたら今度は開封してもらえるかが課題となります。開封率の多くはメールの件名に依存しています。件名にユーザーの名前を記載したり、直近の購入などユーザーの過去のアクションに起因した件名を記載すると開封率が上がります。送料無料や激安、○○円獲得しました!、的なオファー色が強いメールはプロバイダーによってスパム判定される確度も上がりますので、結果を見ながら慎重に適用します。ここでもやはり強いのはクーポンです。新鮮味が薄れない程度にクーポンを織り交ぜながら配信していきます。開封されないメールは配信されていないのと同じです。配達率を改善する業者にいくら高いお金を払っても、メールのコンテンツそのものに魅力がないと全くのお金の無駄遣いになりますので、チームを作ってしっかりとフォローアップしましょう。

クリックスルー率
やっとの思いでユーザーのメールボックスに到着し開けてもらったとしてもクリックして、貴社のサイトに来てもらわないと意味がありません。従い、何クリックされるか、何人のユーザーを本サイトに運んだかが重要な指標となります。ここでのクリックスルー率の計算方法は、総クリック数÷総オープン数でよいでしょう。ユニークをカウントしたりいろいろな方法がありますが、トレンドを把握するだけなので簡単な方法で十分です。昨日のメールより今日のメールのクリック数がなぜ悪いのか、それはオファーが魅力的でなかったのか、それとも送るユーザーベースを間違ったのか、それともそもそも配信されていないのか、開いていないのか毎日分析とフィードバックの時間を設けて改善しましょう。


転換率と単価
本サイトに来てからのKPIは通常のKPIと同じになります。そのメールマガジンからいくらのクリックを受け取り、何件の注文に結びついたのか、その転換率(CVR)と単価を毎日トラックします。この内部ベースへのメールマガジンは他のマーケティングチャンネルと比較してパフォーマンスを測るべきものですので、簡単な比較表を作成して管理します。マーケティングチャンネルにはお金を払っていますが、この内部メールマガジンには払っていないので、先ずはユーザーベースの拡大に伴う、クリック数を増やす努力と、それ経由でタイムリーにユーザーの欲求にあったものを配信するきめ細かい配信コンテンツ管理で、将来的には最大のマーケティングチャンネルにすることが当座の目標となります。


コンテンツ
最後にメールマガジンのコンテンツについて考えてみます。皆さんも多くのメールマガジンを受信されていると思います。貴社のマーケティングチーム、編成チームに必要なのは、競合を含めた売れているオンラインショップのメルマガを毎日受け取り、何がトレンドなのかを理解することです。商品そのもののピックアップに気づきがあるかもしれませんし、レイアウト、配色等デザインに気づきがあるかもしれません。また、最近アメリカのベンチャー等で流行っているのは、少々砕けた会話形式でメールマガジンを送ることもよく実施されています。貴社のブランディング戦略もあるでしょうから、全てを真似るわけにはいかないとは思いますが、是非参考になる部分は吸収させてもらい、よりよいコンテンツを提供できるようにしていきましょう。